国内

エレベーターの間引き運転 節電効果薄く不便を強いるだけ

 今年の夏の節電については、オフィスでは、エレベーターの間引き運転などの取り組みがされている。こういった節電法はどの程度効果があるのか。

 秋田県庁は5月25~27日、本庁舎と第二庁舎で「節電実験」を実施し、結果を公表した。それによれば、もっとも効果が高かったのは「照明器具の全消灯(地下室除く)」で、8300本の照明器具をすべて消したところ、前年比で120kWの削減となった。

 一方、節電量が少なく、効果を確認できなかったのが、「エレベーターの停止(本庁舎と第二庁舎で各1台ずつ)」、「自動販売機23台の停止」、「冷蔵庫96台を“弱”に設定」だった。

 秋田県庁の生活環境部温暖化対策課課長・高橋訓之氏は、これらの節電法で効果が出なかった理由についてこう分析する。

「エレベーターについては、秋田県庁は低層ビルなので、高層ビルの場合とは条件が異なりますし、実験の時間帯(12~13時)の利用者数にも影響を受けたと思います。冷蔵庫については、設定を中から弱に変えれば理論的には効果があるはずですが、はっきりとは数字には表われませんでした」

 実際、「エレベーターの間引き運転」については、エレベーターの構造から考えても、節電効果が疑わしいのは事実である。

 一般的なエレベーターは、乗客の乗るボックスをロープで吊り、滑車の反対側に重りをぶら下げ、巻き上げ機でロープを巻き上げるカウンターウェイト方式を採用している。

 通常は定員の半数が乗っている状態で重りと釣り合う設計で、このとき消費電力はもっとも小さくなり、満員の状態や誰も乗っていない状態でもっとも消費電力が大きくなる。

 エレベーターを製造している三菱電機の広報はこう指摘する。

「エレベーターの台数はビルの利用者数を想定して決められています。間引き運転によって常に満員状態で稼働することになれば、総消費電力は全台運転するのとほとんど変わらなくなる可能性があります。

 一般的に商業ビルの消費電力は空調と照明で7割を占め、エレベーターは5%程度です。何台かの内、1台停止することによる節電効果はそれほど大きいものではありません」

 都内の高層オフィスビルのなかには、間引き運転のせいでエレベーターに“行列”ができていることがあるが、こういうケースでは節電効果は薄いうえに、利用者に不便を強いるだけになっているのだ。

※週刊ポスト2011年7月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン