国際情報

日本人女性 米・田舎の白人ばかりの店で注文取ってもらえず

 おぐにあやこ氏は1966年大阪生まれ。元毎日新聞記者。夫の転勤を機に退社し、2007年夏より夫、小学生の息子と共にワシントンDC郊外に在住。著者に『ベイビーパッカーでいこう!』や週刊ポスト連載をまとめた『アメリカなう。』などがある。おぐに氏が、アメリカにおける「マイノリティ感覚」について解説する。

 * * *
 突然ですが、この夏、日本に引っ越すことになりました~。そんなわけで、アメリカの友人たちが送別会を開いてくれた。

 友人のアンに「機会があったら、今度はアメリカのどの街に住みたい?」と聞かれたので、「今度もワシントンDCの郊外かな。外国人が多くて国際色豊かだから、マイノリティでも暮らしやすいし」としごく当たり前の返事をしたんだけど……。アンは、驚きで目を丸くしながら、「えーっ、あなた、自分のことを『マイノリティ』って感じてたの?」だって。

 おいおい、何を今さら! 見てよ、この髪、この肌。どこから見ても完璧なアジア人。おまけに英語は下手だし、市民権もない。もう、この国じゃ正真正銘のマイノリティよ。だいたい、英語に不自由ない、アメリカ生まれの高学歴のアジア系アメリカ人ですら、「ガラスの天井」ならぬ「バンブーシーリング」(竹の天井。竹はアジアのイメージらしい)のせいで、出世も頭打ちになるって言われてるのに。

 つい熱っぽく語っちゃった。「私だって、白人ばかりの片田舎でレストランに入ったら完全に無視され、注文すら取ってもらえなかったこともあったよ。アメリカ人の夫を持つ日本人の女友達なんか、『DC界隈ですら、夫と一緒の時と夫がいない時では、レストランでの扱いが違うのよー』って腹立ててるもんね」

 アンは「移民大国アメリカは外国人に受容的なはず」と信じてたみたい。おまけに彼女にとっての「マイノリティ」は、アメリカに到着したばかりの貧しい移民や、人種差別された長い歴史を持つアフリカ系(黒人)であって、自分と仲良しで能天気な日本人駐在妻(つまり私)までが、自分を「マイノリティ」と感じて暮らしてるとは思わなかったんだって。

 アンは申し訳なさそうに「私たち白人って、自分がそういう嫌な目に遭ったことがないから、気付くことができないのね……」。ちょっと意外だった。常々、違う人種・民族のホンネに触れられるのが、多民族国家アメリカの面白さだと感じてきたのに。案外、お互いに見えないことも多かったのね~。

※週刊ポスト2011年8月12日号
(「ニッポン あ・ちゃ・ちゃ」第155回より抜粋)

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン