ライフ

95歳のパネー号事件パイロット 自ら参加した南京爆撃を語る

太平洋戦争(大東亜戦争)とは何だったのか。最前線で戦った兵士たちは、あの戦争をどう受け止め、自らの運命をどう捉えていたのか。ノンフィクション作家・門田隆将氏が、太平洋戦争の生き残りを全国に訪ね歩き、未曾有の悲劇を生々しく再現したのが、『太平洋戦争 最後の証言(第一部 零戦・特攻編)』である。「九十歳」の兵士たちは、自分たちがなぜ戦場に向かい、何を守ろうとしたのかを後世に伝えようとしていた。時を超えても変わらない使命感と親兄弟を守るという熱い思い──門田氏がレポートする。

* * *
長野に住む原田要は大正五年生まれで、今年九十五歳となった。日中戦争や真珠湾、ミッドウエー海戦を含め、多くの激闘を経験し、生き抜いた戦士である。

原田が操縦する九五式艦上戦闘機が南京の光華門を爆撃したのは昭和十二年十二月十日のことだ。

光華門突破に苦戦する脇坂部隊を援護するため、江蘇省の常州飛行場を飛び立ち、原田は六十キロ爆弾で光華門を爆撃している。さらに城壁を守る中国兵に機銃掃射もおこなった。

「城壁の幅がかなり厚く、中国兵たちはその上で必死に抵抗していましたからね。彼らを空から機銃で撃ちまくりました」

今から七十四年も前の南京攻略戦でのことである。だが、このあと彼らは思いがけない“国際問題”を引き起こしてしまう。十二月十二日のことだ。

「私たちは、南京から敗残兵が揚子江を逃げるのでそれを攻撃しろという命令を受けていました。その時、パネー号という米国の砲艦とイギリスの商船を沈めちゃったんですよ。中国の船団の中にまぎれ込んでいたため、外国船であることはわかりませんでした」

“パネー号事件”と呼ばれる誤爆事件である。

短期間に大量に養成されていった太平洋戦争末期の搭乗員とは違い、この頃の飛行戦闘員は技術も高く、出撃すれば戦果は大きかった。アメリカの砲艦もひとたまりもなかったのだ。

※週刊ポスト2011年8月19・26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
イエローキャブの筆頭格として活躍したかとうれいこ
【生放送中に寝たことも】かとうれいこが語るイエローキャブ時代 忙しすぎて「移動の車で寝ていた」
NEWSポストセブン
伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン