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2011.11.03 16:00  週刊ポスト

地味だが格調高い高座の入船亭扇辰 実年齢以上の風格が漂う

広瀬和生氏は1960年生まれ、東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。30年来の落語ファンで、年間350回以上の落語会、1500席以上の高座に接する。その広瀬氏が、格調高い高座と評するのが入船亭扇辰だ。

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落語家には、独演会で真価を存分に発揮するタイプもいれば、寄席などのチームプレーの中でこそ光るタイプもいる。

入船亭扇辰は、個性派の仲間と組んだ二人会、三人会のようなシチュエーションにおいて抜群の存在感を放つ演者だ。

1964年生まれ、新潟県出身。1989年に入船亭扇橋に入門し、2002年に真打昇進。二ツ目時代から正攻法の古典の演者として期待され、真打昇進後は寄席のトリを頻繁に務めている。

軽い滑稽噺から人情噺の大ネタまで持ちネタは幅広い。『三井の大黒』『ねずみ』『心眼』『麻のれん』といった扇橋十八番を見事に受け継ぎ、最近では儒学者荻生徂徠を題材に取った人情噺『徂徠豆腐』で新境地を切り開いた。

柔らかで落ち着いた雰囲気と端正な口調、そして繊細な演技力。殊更に現代的なギャグを入れ込んだりすることの無い扇辰の高座には、実年齢以上の風格が漂う。

落語ファンから高く評価されている扇辰だが、意外なほどに独演会が少なく、扇辰といえば二人会、三人会といったイメージが強い。

有名なのは、同期入門の柳家喬太郎と長年続けてきている「扇辰・喬太郎の会」。ネタ下ろしのための勉強会だが、今や落語ファンが激しいチケット争奪戦を繰り広げる人気イベントの一つだ。

現代的で、時にエキセントリックですらある喬太郎の振り幅の広い芸風と、江戸の薫りが漂う職人肌の扇辰の品行方正な芸風はおよそ対照的だが、だからこそ相性が良い。二人の異なる個性が激突することで生じる化学反応が、この会独特の魅力を生み出している。

扇辰と近い年代には、喬太郎の他にも、豪快キャラの橘家文左衛門や破天荒な新作の三遊亭白鳥など、強烈な個性を持つ落語家が多く、彼らの活躍が現在の落語界の隆盛を支えているのは間違いない。そんな中で扇辰の、一見地味だが格調高い高座は、異彩を放っている。

※週刊ポスト2011年11月11日号

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