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上海閥優勢か 中国有力サイトが中国のトップ人事を完全予測

中国共産党の最高指導部が大幅に入れ代わる5年に1度の第18回党大会が来年秋開催されるが、中国の人事情報に定評があり、2007年秋の第17回党大会の政治局常務委員9人全員の顔ぶれや序列をすべて当てた米国の中国情報ウェブサイト「多維新聞網」(以下、多維)がこのほど、第18回党大会の最高指導部人事予想を伝えた。なかには意外な人物も入っていて、チャイナウォッチャーの間で論議を呼びそうだ。

まず党政治局常務委員会の序列第1位について、多維は下馬評通り、習近平・国家副主席が選出されると予想した。これは「党の規定方針」通りで、5年間の“テスト期間”を経て、その評価に変化は生じなかったためだ。また、通常、党総書記に就任した場合、同時に党中央軍事委員会主席にも選出されるが、胡錦濤主席が2002年に総書記に選出された際、江沢民元主席が党軍事委主席の座に居座ったこともあり、慣例通り、習氏が党中央軍事委主席に選出されるかどうかについて、触れていない。

常務委員会の序列2位は通常、全国人民代表大会(全人代=国会に相当)常務委員長(国会議長に相当)に就任する。現在は呉邦国・全人代委員長だが、多維によると、次回大会では現在の上海市党委書記である兪正声・党政治局員が選出されるとの予測だ。兪氏といえば、上海市トップとして、多くの犠牲者を出した上海市の高層ビル火災や、まだ記憶に新しい浙江省で発生した高速鉄道事故の責任を問われており、一時は常務委員レースから脱落したとの見方もあった。

これに対して、多維は「兪正声は太子党閥(共産党古参幹部の子弟グループ)の成員であり、同時に強い影響力を江沢民・前主席の上海閥と強い繋がりを持つことから、上位での常務委員選出は当然だ」と分析する。ただ、兪氏は来年の党大会開催時、常務委選出の年齢制限である66歳ぎりぎりであるため、「全人代委員長は1期5年で辞任し、引退する」と予測している。

党政治局常務委員会における序列3位は国務院総理(首相)だが、これには下馬評通り、李克強・第一副首相が選出されると予測。江沢民氏が李氏の首相就任に難色を示してとの情報もあるものの、「李克強はこれまで大きな失敗はなく、中央の政策にも大きな変化はないことから、人事の方針には変化はないだろう」と指摘。

そのうえで、中国共産党は安定を重視しているほか、李氏は胡錦濤主席の右腕であり、中国共産主義青年団(共青団)閥の重鎮でもあるとして、「党最高指導部人事の規定方針を変えるような波風を立てるようなことは避けるだろう」と分析する。

序列4位の中央人民政治協商会議(政協)主席について、現在の天津市党委書記の張高麗・政治局員が選出されると予測。張氏はエネルギー利権に強い「石油閥」に属するといわれるが、同時に江沢民氏とも強い信頼関係を築いているためだ。「張高麗以外なら、上海閥のメンバーでやはり江氏と強い繋がりを持つ張徳江・政治局員(副首相)が政協主席に就く可能性もある」とも指摘している。

序列5位は思想・宣伝担当で、現在は李長春・常務委員が担当しているが、その後を襲うのは党宣伝部長の劉雲山・党政治局員だ。多維は「劉雲山は政治局員で、党書記処書記でもあり、中央宣伝部長であり、中央精神文明建設指導委員会弁公室主任であるため」と指摘。さらに、劉氏は内モンゴル自治区で共青団の要職を担当しており、当時共青団の最高幹部だった胡錦濤主席との関係が深かったことも、その理由としている。

現在の序列6位は習近平国家副主席で、主に党務全般を担当しているが、習氏の後継者として、李源潮・党中央組織部長(政治局員)の名前が挙げられた。李氏も共青団閥で、胡主席との関係も深く、中央で17年間も共青団幹部を務めたほか、2000年から江蘇省トップとして地方指導者の経験を積むなど、国家副主席としての資格を満たしているという。

現在の序列7位は李克強副首相だが、その後継は王岐山副首相が有力だ。王氏は次期最高指導者の習近平氏が率いる太子党閥に属し、北京市長を経験したほか、国際経済に通じており、その政治手腕は江氏や胡主席、さらに温家宝首相からも高く評価されており、第一副首相に適任と多維は指摘する。

序列8位は党幹部の腐敗などを取り締まる党規律検査委員会主任だが、現在の上海閥の賀国強常務委員に代わって、やはり上海閥の張徳江副首相が就くと多維は予想する。張氏は経歴的にも申し分ないほか、上海閥に属し、江沢民氏に近いためだ。

最後の序列9位は中国では司法部門を束ねる党政法委主席を務めるが、多維は汪洋・広東省党委書記と、薄熙来・重慶市党委書記の2人の名前を挙げている。汪洋氏は胡主席の共青団閥、薄熙来氏は太子党閥で、最後の常務委員をめぐって、両グループが水面下で暗闘を繰り広げているとの見方だ。

このようにみてみると、常務委員人事をめぐっては、上海閥・太子党閥連合と共青団閥の戦いという図式で、特に江沢民氏の影響力が強く働いているといえよう。多維の予想では、9人の常務委員のなかで、前者が5人、後者は3人で、最後の序列9位の党政法委書記をめぐって、汪洋氏と薄熙来氏が争っており、いまのところ上海閥・太子党閥連合が共青団閥を相手に優勢に展開しているといえそうだ。

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