国内

野田政権 電波オークション潰し2兆円獲得するチャンス逃す

国民の知らないところで、公共財産である電波を山分けする壮大な「談合」が進められている。

1月27日、電波を所管する総務省は、携帯電話会社1社に割り当てる周波数900Mヘルツ帯の認可申請を締め切った。応募したのは、ソフトバンク、イー・アクセス、NTTドコモ、KDDIの4社。早ければ今月中にも審査は終了し、電波の割り当てを受ける新事業者が公表される見通しだ。

昨年11月、行政刷新会議は提言型政策仕分けで、「900Mヘルツ帯からオークション制度を導入すべき」「オークション収入は一般財源とすべき」と提言した。

これまで日本では、電波を割り当てる事業者を総務省が独断で選定し、その事業者から得る電波利用料を特定財源として自らの自由にしてきた。しかも利用料は諸外国に比べればタダ同然の安さで、役人にも事業者にもオイシイ仕組みだった。一方、電波オークションは、最も高い金額を提示した事業者に電波を割り当てる制度で、売却益を一般財源とすることから新たな税外収入になる。公正な競争原理の促進と国庫収入の増大をもたらす制度として、すでにOECD加盟国の大半が導入している(※)。

今回新たに割り当てられる900Mヘルツ帯は、3.9世代と呼ばれる携帯電話通信に用いられるもので、今年度中にも割り当て予定の700Mヘルツ帯と合わせ、「プラチナバンド」と呼ばれる貴重な帯域だ。だからこそ、行政刷新会議はオークションの導入を求めた。

ところが総務省は、「透明性を図りつつ、割当事業者を決定」(1月19日総務省発表)と宣言し、提言を無視して、従来どおりに事業者を恣意的に選ぶことを決めた。電波オークションはあっさりと潰されたのだ。

行政刷新会議で民間仕分け人を務めた鬼木甫・大阪大学名誉教授(経済学)は、こう憤る。

「電波の市場価格を諸外国のデータを基に試算すると、新たに割り当てられる900Mヘルツ帯だけで4000億~5000億円の価値がある。700Mヘルツ帯も合わせると、両帯域で2兆円を超す価値を持っています。今後入札が予定される帯域にはそこまでの価値がない。今回オークションが実施されなければ、電波オークションを行なう意味そのものを失いかねない」

野田内閣は、オークションを実施していれば2兆円もの収入が見込めた千載一遇のチャンスを、あっさりと手放したことになる。

※米英など多くのOECD諸国では、事業者が電波オークションによって帯域の使用権利を落札した上で、別途、電波利用料を毎年支払う。一方、日本では帯域を使用する権利に対して支払う対価はなく、毎年の電波利用料だけ支払えばよい仕組みになっている。

※週刊ポスト2012年2月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン