有名レッスンプロによる教則本を押しのけ、ベストセラーを連発している素人ゴルファーがいる。5万8000部を突破した『普通のサラリーマンが2年でシングルになる方法』(日本経済新聞社刊)の著者・山口信吾氏(68)だ。
山口氏は、かつて竹中工務店の設計部に在籍するサラリーマンだった。ゴルフデビューは遅く43歳。初ラウンドのスコアは「146」という惨憺たるものだったという。しかしその悔しさをバネに一念発起した。
独自の理論と練習法を元に、59歳で晴れてシングル入りを果たしたのである。それから半年後にはハンディキャップ8を獲得している。山口氏がいう。
「私が本格的に練習を始めたのは、ゴルフクラブに入会した50歳からです。それでもシングルの壁を破ることができた。50歳を過ぎれば体力は若い頃のようにはいかない。しかしその代わりに、実業界で培った知恵がある。それをフル回転させれば、遠回りをしないで効率的に上達することができるのです」
彼の著作が人気を集める理由は、多忙のため練習時間が思うようにとれない一般のサラリーマン・ゴルファーに役立つ練習法・ラウンド術にこだわっているからなのだ。山口氏が、その理論の粋を公開する。以下、山口氏が語った内容だ。
〈デビューはクラブ5本だけでいい〉
私がシングルになれた最大の理由は、30ヤードまでのアプローチとパッティングを猛練習したからです。
ドライバーでミスショットを繰り返していては、何十年かけてもスイングの本質が見えてこない。残された時間が少ない中高年ゴルファーが上達するには、まずショートアイアンで「スイングの本質」をつかむことが最優先なのです。
中高年の初心者であれば、ドライバーやロングアイアンは練習場でも使わないほうがいい。「パター」「サンドウェッジ(SW)」、「ピッチングウェッジ(PW)」、「9番アイアン(9I)」、そして「7番ウッド(7W)」だけでいいでしょう。
私自身、ドライバーなどウッドは使いますが、アイアンは7Iから。シングルでも6Iより上は使っていないのです。
〈1日100球のメトロノームパターを継続せよ〉
先にお話ししたとおり、スコアメイクの最大のカギはパターです。シングルとそうでない人の差は、アプローチとパッティング技術の違いに尽きる。パターマットは上を目指すゴルファーの自宅に絶対必要な練習器具です。
パッティング上達のためには数を打つことが必要ですが、ただ闇雲に練習しても効果は上がりません。正しい「フォーム」、そして「テンポ」をキープすることが重要です。
ポイントは、いかに機械的に「振り子」になりきるかということ。肩からぶら下げた腕と手は、パターを保持しているだけ。手首は全く使いません。背骨を軸にして「人間振り子」を肩で動かす要領で、ヘッドをまっすぐ引いて、まっすぐ振り出すのです。
重要なのが、この振り子を振り出す「テンポ」。
私はメトロノームを用意し、一定のリズムをキープし続ける練習をしています。メトロノームの「カチッ」という音で始動し、次の「カチッ」の瞬間に切り返す。
私は、演奏の速度標語でいうところの「レント(Lento)」、1分間に52拍(2.3秒周期)をキープし続けています。規則正しいルーティンで、ぶれないパッティングをすることが可能になるのです。
※週刊ポスト2012年4月27日号