国内

橋下徹市長の公務員改革は「クビ切り」自体が目的ではない

 タバコ1本で懲戒免職。この橋下徹市長による“厳罰”が、話題を呼んでいる。大阪市営地下鉄の駅長室で喫煙し、火災報知器を鳴らして列車を遅らせたとして、駅助役を免職にする考えを示したものだ。

 さすがにタバコ1本での免職は例がないが、「相当、緊張感がない。裁判闘争も辞さず」とする橋下氏。狙いはどこにあるのか? かつて勤務先の特殊法人の公金浪費などの実態を内部告発し、その経験から公務員や天下り法人の問題を追及し続けているジャーナリストの若林亜紀氏が分析した。

 * * *
 橋下氏が実行してきた改革の中で、彼の行政改革・公務員改革の“手法”を示す象徴的な例が2つあります。

 1つは、「補助金カット」です。橋下氏は、府知事就任後に財政健全化を掲げ、府出資団体への補助金などを1500億円以上もカットしました。「大阪センチュリー交響楽団」には、以前は年間4億円あった府からの補助金が、2009年度に7割カットになり、10年度はゼロになりました。職員が“年収1000万円”として批判された「国際児童文学館」は、閉館して中央図書館へと蔵書を移管。その他、多くの天下り団体への補助金がカットされました。

 2つめは、府職員の給与削減です。給与、ボーナス、退職金など平均10%程度の削減を断行。さらに通勤手当や管理職手当を見直しています。

 こうした改革が行なわれるたびに派手な見出しがメディアで躍るので、いかにも“リストラ役”のイメージがありますが、実際は違います。

 まず、「クビ切り」それ自体が、橋下氏の目的ではありません。彼は地下鉄の駅長室で喫煙して列車を遅らせた助役を免職にする方針を示しましたが、そうした“不良役人の懲戒”は別として、リストラ目的での大量クビ切りはしていないのです。

 補助金を減らした結果、徐々に天下り法人から役職員が減っていくことを狙っているのです。補助金カットだけでも大きな反発があったのだから、強引な大量リストラをすると、改革が進まなくなるほどの混乱を招くと分かっているのです。

※SAPIO2012年5月9・16日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン