まさに春の慶事と呼べそうなのが5月21日の京都大学野球部の勝利だった。関西学生野球春季リーグ、関西学院を相手に1-0。2年生の田中英祐投手が5安打完封、9奪三振。リーグワースト記録を更新中だった京大の連敗は60で止まった。
連敗は2009年5月5日の同志社大戦から始まっていたから、丸3年ぶりの勝利。中には、「勝ったことがないまま野球を辞めなくてよかった」と感涙にむせぶ部員もいたという。
立役者となった田中投手は178センチ、72キロ。線は細いがスリークォーターのフォームからMAX147キロの直球とフォーク、カーブを繰り出す。兵庫・白陵高時代から140キロを投げていたらしく、京大工学部に進学後は1年春のリーグから登場。秋に145キロを投げ、「連敗ストッパー」としての期待を一身に受けてきた本格派右腕だ。
「2シーム系のストレートはボールがよく動くのでミートが難しいと評判。たとえば東京六大学の先発投手と比較しても見劣りしない選手ですよ」(在阪球団スカウト)
そこで気になるのが、京大野球部と東京六大学リーグで現在36連敗中(5月27日現在)の東大野球部、弱いのは、もとい、強いのはどっちか、という問題である。
共にリーグ内のライバルチームは野球推薦での入学が当たり前の名門。超難関の入試を実力で突破した選手だけで戦う圧倒的な不利はいかんともし難く、東京六大学も関西学生野球も入れ替え戦はないから、毎年最下位を独走することになる(東大は29季連続、京大は23季連続で最下位)。
両校が存在意義に疑問を投げかけられがちなほど弱いことは広く知られているが、毎年7月頃に1回、東大と京大の間で行なわれる定期戦について知っている人は少ないのではないか。
結果からいうとこの2校、最近は相当いい勝負である。近10年の勝敗は5勝5敗。まったくの五分なのだ。
※週刊ポスト2012年6月8日号