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電力足りぬというが自家発電の震災後増強分は原発6基分相当

「電力が足りない。だから原発を再稼働させてくれ」――役人、政治家、電力会社が一体となった電力マフィアの言い分がウソであることを本誌は再三指摘してきたが、彼らがひた隠す決定的な「埋蔵電力」がまたもや発見された。実は、民間企業が電力不足に備えて自家発電用のガスタービンを多数出荷しており、自家発電の能力は増強しているのだ。

 だが、国歌戦略室がまとめた電力の「需給検証委員会報告書」にはこの分が必ずしも反映されているとはいえないのだ。大手ガスタービンメーカーはこういう。

「震災後、自家発電設備の引き合いが増えているのは確かです。発注元は、工場やオフィスビル、病院などが多い」

 さらに、こんなデータもある。資源エネルギー庁の「電力調査統計」には、昨年3月末以降の自家発電能力の増強を民間企業が届け出た結果がまとめられている。

 それによると、昨年3月末から9月末までの半年間に、火力・水力・新エネルギー等を含めた自家発電は、5373万kWから5632万kWへと259万kWも増えている。しかもこのデータでは、前述したガスタービンはむしろ減っており、増加分は主に水蒸気でタービン設備を回す汽力発電である。

 ガスタービンの増加が反映されていないのは調査の時期によるものと考えられる(電力会社でもガスタービンの新設は多くが昨夏以降に着工したため、実際の設備増強は昨秋以降だった)。この分も先の報告書では一切無視されている。

 資源エネルギー庁の基盤整備課担当者はこういう。

「報告書の試算は、昨年7月に行なったアンケート調査のフォローアップですから、5373 万kWという数字は、その時点では直近の数字だったわけです。昨年9月の数字は、まあ多少増えていますけど、考慮していないということです」

 しかし、259万kWといえば、大飯原発が再稼働した場合の236万kWを補って余りある数字である。それを「多少増えている」という程度にしか評価しないなら、「多少増える」だけの大飯原発など稼働しなくてよいではないか。

 整理すると、自家発電全体の過去1年の増強分は、ガスタービンなどの設備が国産(90万kW)と輸入(260万kW)で計350万kW、その他で少なくとも259万kW(昨年9月まで)で、計600万kW以上になる。これは原発6基分に相当する莫大な発電能力である。

 民主党の橋本衆議院議員はいう。

「原発事故を機に大企業の工場が自家発電を増やしていることは広く知られているのに、いまだに考慮されていない。それで『電力が足りない』と繰り返し主張するのは全く説得力がありません。再稼働のために、それを妨げる数字を出したくないだけではないか」

※週刊ポスト2012年6月15日号

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