社会学者の橋爪大三郎氏と大澤真幸氏の対論集『ふしぎなキリスト教』が30万部のベストセラーとなり、キリスト教に注目が集まっている。だが、知られていないことも多いが、果たして聖職者はどれほどの年収があるのか。。
2010年度に日本基督教団の牧師に支払われた「謝儀」(給与)は1人当たり年間約276万円(『日本基督教団年鑑2012年版』)。「謝儀」が1000万円を超す牧師もいるが、一般的には「謝儀」の額は少ない。
「単純にサラリーマンと比較できません。住居費、光熱費、通信費、車の維持費などを所属する教会が負担してくれるケースもあるからです。ただ、収入面では非常に恵まれない聖職者がいることも確かです。『神に仕えているのだから』と牧師の清貧を是とする気風も一部にはあります」(キリスト教会研究者・八木谷涼子氏)
日本の聖職者の数は1万2689人(『キリスト教年鑑2012年版』)。聖職者になるには、カトリックの場合、まずは神学校に入学して寄宿生活を送る必要がある。入学資格は、洗礼を受けてから3年以上経過していること、通っている教会の主任神父の推薦状があることなどだ。神学校での養成期間は大学卒が6年、高卒などの場合は一般教養課程が加わるのでもう少し長くなる。
「大学のようにカリキュラムが終われば卒業ということではなく、もっと学ぶ必要があると判断されれば養成期間は伸びます」(カトリック中央協議会広報)
養成期間を終えると、ローマカトリック教会の名で、司祭を任命する「叙階」という名の儀式を受け、晴れて神父と呼ばれる。
一方、プロテスタントの場合、職務や資格についての考え方は様々で、「教会員さえ認めれば、誰でもその日から牧師になれる教会もあります」(前出・八木谷氏)。とはいえ、大多数の教会組織は独自の教職養成・認定システムを備えている。
例えば、日本基督教団に属する教会の牧師になるためには、教団が設立した東京神学大学、あるいは同志社大学、関西学院大学などの神学部を卒業して「補教師」という資格を取り、「補教師」となってから3年目に教団の試験を受け、合格して牧師となる。最低でも5年、通常は7年の修学が必要だ。
※週刊ポスト2012年6月15日号