国内

危機管理 日本3大頓珍漢は東電、千原せいじ、菅直人と専門家

 危機管理は、他者の事例を疑似体験することによって向上する。そして、テレビに映し出される記者会見やコメントは、実は反面教師ばかりだと危機管理専門家でリスク・ヘッジ代表の田中辰巳氏は指摘する。これら反面教師はどんな参考になるのか。以下は、田中氏の解説である。

 * * *
 頓珍漢(とんちんかん)とは、鍛冶屋の相槌の音が揃わない状態に例えて、つじつまの合わない間の抜けた発言および人のことを差す。危機管理においても、しばしば登場して事態を悪化させてしまう。

 東京電力のお客様本部の島田保之執行役員は、5月末頃からテレビに出演して、「従業員5000人以上の企業と比較して、現在の東京電力の社員の給与は高くない」という趣旨のフリップを示して、電気料金の値上げに理解を求めていた。

 この画面を見た私は唖然としてしまった。経営破綻を目前にした企業の経営者が、従業員5000人以上の企業と自社の給与を比較しているのだから。しかも、経営破綻を避けるために投入される公的資金は国民の税金であり、その国民に電気料金の値上げという負担を無心するとは。まさに抱き上げてくれた命の恩人の懐から、財布を奪うようなものだ。
頓珍漢以外の何者でもない。

 この有様では、東京電力の国民からの信頼回復はとうてい望めないだろう。

 お笑いコンビ次長課長の河本準一さんの母親が、生活保護を受給していた問題にからんで、同じ吉本興業に所属する千原せいじさんが呆れた発言をした。河本さんの母親の生活保護受給を告発した片山さつき議員について、「旦那さんが結構でかい会社を潰してた」とテレビ番組で言い放ったという。

 すなわち、暗に片山さつき議員を批判して、河本準一さんを擁護してみせたのである。これを知った私は唖然としてしまった。そんなことをしたら、河本準一さんへの風当たりが強くなるだけだ、と思ったからである。

 可愛い腕白息子の投げたボールが、隣家の窓硝子に当たって割れたとき、賢明な親は息子を擁護するような発言はしない。「息子はわざとぶつけたのではない」などとは言わず、隣家の主人の目の前で息子を怒鳴りつけるだろう。あるいは息子にゲンコツをくらわせてまで、相手の怒りを鎮めようとするに違いない。可愛い息子を守るために。

 それと比較すると、千原せいじさんの発言は頓珍漢と言わざるを得ないだろう。

 菅直人前首相は6月10日の自身のブログで、国会の(福島原発)事故調査委員会を批判した。「一方的な解釈と言わざるを得ない」と。『過剰介入』と指摘されたことについても、「そうせざるを得なかったのが現実」と言い訳にしか聞こえない反論をした。

 この新聞報道を読んだ私は唖然としてしまった。事故調査委員会は黒川清東京大学名誉教授を委員長とし、ノーベル賞を受賞した田中耕一さんらの学者を中心とした9人の委員からなる。この客観的な調査結果を否定したのだから。

 一方で、得心がいく思いもした。誰の意見にも耳を傾けずに、自分だけが正しいという姿勢は、事故当時も現在も同じなのだ、と。

 自身のブログで自己の正当性を主張するなど、まさに頓珍漢そのものだ。評価というものは、他人にしてもらってこそ意味があるもの。自身で自分を高く評価したら、他人から高く評価されにくくなることをご存知ないらしい。

 危機管理は、他者の事例を疑似体験することによって向上する。東・千・菅の三者は、我々に頓珍漢の弊害を示してくれた。反面教師として参考にして、自分ならどんな言動をするのかを、是非とも疑似体験して頂きたい。

関連記事

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト