国内

民主党の選挙制度改革案 維新の会等の国会進出阻止が狙い

 消費増税に向けて民主、自民、公明の3党合意が成立。法案成立に向けて大きく動き出した。野田佳彦首相は、「やり遂げなければならないことをやり抜いた上で民意を問う」と言明している。増税法案が成立すれば、ただちに解散・総選挙を打って増税が是か非か国民の意思を問うべきである。

 だが、いま解散すれば大阪維新の会などが大躍進する一方、増税派の民主党・自民党ともに苦戦が予想される。そこで増税派は選挙を少しでも有利にするため「禁じ手」を繰り出した。

 民主党が6月18日に国会提出した衆院選挙制度改革法案だ。これは、小選挙区定数を5議席(福井、山梨、徳島、高知、佐賀)減らして違憲状態の「1票の格差」を是正し、比例代表定数を40削減する内容で、輿石東・民主党幹事長が中心になってまとめた。

「国会議員も身を切る」と衆院定数80削減を公約していた野田政権は、国民には5%満額の増税を押しつけ、自分たちが身を切る部分は半分に値切ったわけだ。

 法案には定数削減の裏で比例代表に2つの重要な制度変更が盛り込まれている。比例代表のうち35議席を「連用制」という方法で配分することと、これまでの11ブロックごとの議席配分から、参院と同じ全国比例を導入することだ。

 狙いは公明党懐柔と大阪維新の会など地方政党の国会進出阻止にある。

 連用制は小選挙区での議席獲得数が少ない中小政党に多くの比例の議席を割り当てる制度で、公明党が導入を主張してきた。同党は前回総選挙で小選挙区は全敗し、現在は全員比例の21議席だが、過去の得票率から試算すると、新制度では比例だけで約30議席確保できる。

 民主党幹部はこう語る。

「輿石さんは総選挙を来年夏の衆参同日選挙まで先送りしたいが、公明党は過去のダブル選挙では投票率が上昇したため議席を大きく減らした経験があり、絶対反対だ。しかし、この制度なら、公明党は現職の21人に加えて、落選中の太田昭宏・前代表や北側一雄・前幹事長など9人の小選挙区候補を比例に回しても全員当選させることができる。公明党に議席を回すから、選挙を先送りさせろという取引だ」

 「全国比例」の導入は地方政党には打撃になる。選挙分析に定評のある政治ジャーナリスト・野上忠興氏はこう指摘する。

「現行のブロック比例であれば、近畿や四国、中国ブロックは大阪維新の会、東海ブロックは減税日本、北関東や南関東はみんなの党など第三極や地方政党が得意な地盤で比例第一党になる可能性がある。だが、全国集計になれば、地方政党がバラバラで戦っても比例の議席は伸びない。かといってそれぞれ個性の強いリーダーがいて、『大阪都』など要求も地域性が強い地方政党が結集するのはなかなか難しい。

 今回の改革案には他にも、政党要件で最低限必要な比例代表候補者数を引き上げたり、ブロック単位の名簿登載者数で決められていた街宣車の台数制限を全国単位にするなど、地方政党には圧倒的に不利になっている」

※週刊ポスト2012年7月6日号

関連キーワード

トピックス

司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン
M-1での復帰は見送りとなった松本(時事通信フォト)
《松本人志が出演見送りのM-1》今年の審査員は“中堅芸人”大量増へ 初選出された「注目の2人」
NEWSポストセブン
浩子被告の顔写真すら報じられていない
田村瑠奈被告(30)が抱えていた“身体改造”願望「スネークタンにしたい」「タトゥーを入れたい」母親の困惑【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
「好きな女性アナウンサーランキング2024」でTBS初の1位に輝いた田村真子アナ(田村真子のInstagramより)
《好きな女性アナにランクイン》田村真子、江藤愛の2トップに若手も続々成長!なぜTBS女性アナは令和に躍進したのか
NEWSポストセブン
原英莉花(時事通信フォト)
女子ゴルフ・原英莉花「米ツアー最終予選落ち」で来季は“マイナー”挑戦も 成否の鍵は「師匠・ジャンボ尾崎の宿題」
NEWSポストセブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
筒香が独占インタビューに応じ、日本復帰1年目を語った(撮影/藤岡雅樹)
「シーズン中は成績低迷で眠れず、食欲も減った」DeNA筒香嘉智が明かす“26年ぶり日本一”の舞台裏 「嫌われ者になることを恐れない強い組織になった」
NEWSポストセブン
陛下と共に、三笠宮さまと百合子さまの俳句集を読まれた雅子さま。「お孫さんのことをお詠みになったのかしら、かわいらしい句ですね」と話された(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
【61才の誕生日の決意】皇后雅子さま、また1つ歳を重ねられて「これからも国民の皆様の幸せを祈りながら…」 陛下と微笑む姿
女性セブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン