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落合氏が中日選手に実践させた“当たり前で単純すぎること”

 7月16日、横浜市の神奈川県民ホールで前中日ドラゴンズ監督・落合博満氏の講演会が行なわれた。副題は『オレ流野球の真実、人の育て方、常勝チームの作り方とは』。1リーグ時代から数え、67年間で5回しか優勝できなかった中日を、8年間で4回もの優勝に導いた名将は、どのようにしてチーム改革を進めたのか?
 
 2003年オフ、監督就任直後の秋季キャンプで、落合氏はあることを感じたという。

「(選手は)すぐ能書き垂れる。あれもできます、これもできますという。でも、『練習している』というヤツほど打てない。『練習してたら、足つったり、(手が)痙攣したりしねえよ。偉そうなこというな。体が証明してるだろ』って」(落合氏=以下同)

 チーム内には、“甘えの体質”があった。打撃練習をする選手たちの様子を見て、落合氏は驚いたという。

「『手にマメができたから、ベンチ裏に行って応急処置をしてくる』といったまま、帰ってこない。それからは応急処置の箱を(バッティング)ゲージの横に置きました。すると、今度は『水分補給してくる』と言い出す。行ったら、帰ってこない。ペットボトルも、ゲージの横に置いて、逃げ場なくさせました」

 このキャンプで、選手の意識改革を施しながら、落合氏は一つの指針を見つけ出した。

「体力をつけるのか、技術を教えるのか、どっちがいいのか? 体力がないと長続きしない。教えることはたくさんある。その体力があるのか? まずは、バットを振る体力をつけないといけない。そこから始めた」

 アマチュア時代は死ぬ物狂いでボールを追いかけた選手も、プロになると、とかく“調整”という都合の良い言葉を使って、練習しない選手も増えてくる。だが、落合氏はそれを許さなかった。

「うまくなりたければ練習しろ」――。当たり前で、単純すぎることを実践させたからこそ、落合ドラゴンズは輝かしい戦績を残したのかもしれない。

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