3か月で13億円――石原都知事が尖閣諸島購入計画をぶち上げると、瞬く間に多額の寄付金が集まった事実は、日本国民の領土への関心の高さと危機感の表われといえよう。尖閣諸島に限らず、北方領土、竹島、沖ノ鳥島は日本領土でありながら、日本人が足を踏み入れることができない。しかし、日本領土である確かな証を残すため、これらの地域に本籍を移す人が着実に増えている。
尖閣諸島に本籍を置く日本人は41名(2012年2月現在)。その中のひとり、会社役員の奥茂治さんは、その理由をこう語る。
「尖閣諸島防衛協会の幹事として、島に日本国旗の碑を作る活動をしていました。途中から上陸が認められなくなり、非暴力的に領土を主張する方法として10年前に本籍地を移しました」
尖閣以外にも目を向けると、竹島の不法占拠を続ける韓国では、今年6月、与党セヌリ党の幹部7人が竹島に上陸して“実効支配”を誇示した。竹島に観光施設や大型ふ頭を建設する計画も進んでいる。
北方領土でも、7月にメドベージェフ首相が国後島を再訪した。択捉島では、来年の供用開始を目指す新空港や、大型船が接岸できる船着き場の建設が進んでいる。
韓国とロシアが不法占拠の既成事実化を着々と進める一方で、尖閣諸島や沖ノ鳥島に対しては中国の圧力が高まっている。この7月に中国政府は「尖閣は核心的利益」と主張し、漁業監視船による巡視活動を強化する方針を打ち出した。沖ノ鳥島に対しても、国際機関の大陸棚限界委員会が4月に周辺海域を日本の大陸棚として認めたにもかかわらず、中国は相変わらず「岩」だと主張している。
このような事態を招いたのはひとえに日本政府が弱腰だからだ。業を煮やした国民が、政府に対する静かな抗議行動として行なっているのが、こういった領土への本籍移転である。
日本では現住所に関係なく、他人の所有地であろうとどこにでも本籍地を置ける。竹島に本籍地を移した人は7年前の26名から3倍以上に増え、尖閣へ転籍した人は1年で2倍に増えた。この事実から民主党政権はいつまで目を背けるのか。
※週刊ポスト2012年8月10日号