経営破綻から2年8か月、業績をV字回復させた日本航空(JAL)が9月中に「再上場」を目指している。
2012年3月期の最終利益はJALが過去最高の1866億円を記録したのに対し、ライバルの全日本空輸(ANA)も過去最高益ながら281億円止まり。生き残ったANAが“死に体”だったはずのJALに大きく水をあけられた。再上場でさらなる競争の激化は間違いない。
そこで、本誌は両社関係者に加え、政界、財界などに幅広く取材を尽くした。両社のやり合いのニュアンスを読者にリアルにお伝えするため、本誌編集部内でJAL派とANA派に分かれてディベートを行ない、その様子を本原稿として構成した。くれぐれも明記しておくが、両社の当事者が実際に直接論争を展開しているわけではないが、内容はすべて取材で得られた情報である。
JAL派(以下、J):V字回復のために人件費や経費など身を削っているけどお客様に対するサービスは削っていない。ANAは人件費を削らない分、サービスを削ってるけど(笑い)。
ANA派(以下、A):どういうこと?
J:例えば、JALは機内のコーヒーサービスは無料でやってる。(うれしそうに)ANAは一時コーヒーを有料にして、ずいぶんクレームを受けてたよね。
A:それは“より美味しいコーヒーを飲みたい”というお客様の声に応えて、スターバックスと提携したから。無料のコーヒーにはない美味しさがあった。
J:だけど、有料にしたのは2010年4月から今年5月までで、今年6月から無償を復活した。やっぱりクレームが原因なんでしょ?
A:いやいや、無料に戻したのはLCC(格安航空会社)に対して差別化をはかるため。別に苦情がきたからじゃない。
J:ホントかなァ。この6月からプレミアムクラスで出していたシャンパンを、スパークリングワインにランクを落としたって聞いてるよ(ANA広報部:「プレミアムクラスのドリンクの種類は増やし、料理も人気飲食店との提携を開始した。コスト削減ではなく、サービス向上の一環」)。
無料の機内飲み物の種類だって、ANAはコーヒー、日本茶、アップルジュース、ミネラルウォーターの4種類でしょ? JALはコーラやスープなど含めて7種類ある(と胸を張る)。
※週刊ポスト2012年8月10日号