国内

大正3年建設の東京駅 関東大震災にもビクともしなかった

 銅ぶきのドームをいただいた、全長335mに及ぶ赤煉瓦造りの3階建ての建物。10月1日、東京駅丸の内駅舎が1914(大正3)年の建築当時そのままに復原され、グランドオープンした。

 東京駅の建設計画が動き出したのは明治時代の中頃のことだった。日本最初の鉄道は1872(明治5)年に新橋~横浜間、1883年には上野~熊谷間が開通していたが、新橋と上野の間は寸断されたままとなっていた。それを結び、首都・東京の中心となる駅をつくるプランが持ち上がった。

 今からは想像もできないが、当時の東京駅周辺は何もない原っぱが広がっていたという。『東京駅はこうして誕生した』(ウェッジ刊)の著者で作家の林章さんの話。

「この場所は江戸城の正面にあたり、大名屋敷がたくさんありました。しかし明治維新の後、大名が国元に帰って屋敷が空になった後に大火災が起きて、何もない野原になっていたんです」

 駅の設計に当たったのは、日本銀行(現在の本館)なども手がけた日本の建築家第1号といわれる辰野金吾。1905年に日本が日露戦争に勝利したことを受け、「世界の一等国」にふさわしい駅舎を建てようとの機運が盛り上がったという。

「司馬遼太郎さんが『坂の上の雲』で描いたような、日本人がひたすら坂の上を目指して邁進していた時代の雲を象徴するのがあの東京駅といってよいでしょう。全長が335mもある駅舎は東京タワーより長く、当時、アジア最大の建物といわれました」(林さん)

 工事は1908年から始まり、完成したのは6年後の1914年。動員された工事関係者はのべ74万人、総工費は280万円。現在の価値に換算すると200億円以上にも相当すると見られている。

「レンガを1枚1枚丁寧に重ね、間を埋める漆喰を完全に乾くまで天日干ししていました。1日に多くても400枚しかレンガをのせないほど丁寧に仕事をしていた」(鉄道ライターの原口隆行さん)

 その技術の高さやこだわりは、復原にあたった現代の企業をも驚かせた。施工を中心になって進めた鹿島建設の広報室担当者はこう語る。

「例えばレンガの間には『覆輪目地』という技術が施してありますが、この手法を使うと陰影ができ、深みが出ます。ところが現在ではこの技術は使われておらず、左官に指導してコテをつくるところから試工錯誤して作業しました。施行部分の総延長が数kmにも及ぶので、職人さんからは『気が遠くなる』という声が上がっていました」

 何より大変だったのは地下の免震構造だったという。駅舎は1万本もの木の杭で支えられていて、1923年の関東大震災にもビクともしなかった。それを今回、より強固なものにするため、施工期間5年のうち実に3年を費やし、免震化工事が行われた。

「通常、建物は基礎部分から造っていきますが、今回は地下部分の基礎から地上建物内部の内装まで同時並行で行われました。しかも乗降客が毎日使っているわけですからコンコースなどに接する作業は終電から初電までの3時間程度しかありません。しかし、終電が終わっても、すぐに駅から人がいなくなるわけではないですし、電車の遅延などにより時間がなくなり、作業をやめた日もあったようです」(前出・広報室担当者)

※女性セブン2012年10月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《スクープ》“連立のキーマン”維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官が「秘書給与ピンハネ」で税金800万円還流疑惑、元秘書が証言
NEWSポストセブン
2018年、女優・木南晴夏と結婚した玉木宏
《ムキムキの腕で支える子育て》第2子誕生の玉木宏、妻・木南晴夏との休日で見せていた「全力パパ」の顔 ママチャリは自らチョイス
NEWSポストセブン
大分県選出衆院議員・岩屋毅前外相(68)
《土葬墓地建設問題》「外国人の排斥運動ではない」前外相・岩屋毅氏が明かす”政府への要望書”が出された背景、地元では「共生していかねば」vs.「土葬はとにかく嫌」で論争
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
《雅子さま、62年の旅日記》「生まれて初めての夏」「海外留学」「スキー場で愛子さまと」「海外公務」「慰霊の旅」…“旅”をキーワードに雅子さまがご覧になった景色をたどる 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
《悠仁さまの周辺に緊張感》筑波大学の研究施設で「砲弾らしきもの」を発見 不審物が見つかった場所は所属サークルの活動エリアの目と鼻の先、問われる大学の警備体制 
女性セブン
清水運転員(21)
「女性特有のギクシャクがない」「肌が綺麗になった」“男社会”に飛び込んだ21歳女性ドライバーが語る大型トラックが「最高の職場」な理由
NEWSポストセブン
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン