鮨を知るには、まず「旬」を知る必要がある。春夏秋冬、それぞれに旨い魚は異なるからだ。せっかく鮨を味わうならば、是非ともその時期一番の旬な鮨ダネに出会いたいもの。そこで鮨ダネの旬が一目でわかるカレンダーを作成した。監修を依頼したのは、東京・新橋の名店『第三春美鮨』の長山一夫・店主である。
氏によれば、「旬」は大きく分けて3つあるという。
【季節的はしりの旬】
旨さは未成熟ながらも、文化的・地域的伝統などから旬とみなす。初ガツオ、シンコなどがこのケース。
【旨さの盛りの旬】
魚介類のほとんどは産卵を前にして旨さを充実させていく。その魚介類の持ち味が十二分に引き出される時期。
【漁獲量的盛りの旬】
産卵準備で海面近くや浅瀬へ移動し貪欲な食欲から漁獲量が増大する時期。卵や精巣は肥大するが、身肉の旨さはピークを過ぎる。
「江戸前鮨の感覚では産卵を基準に、旨さの最盛期と考えます。年に2回、旬があるものもあり、それらを知ると鮨の楽しみ方も広がります」(長山氏)
以下、鮨ダネの旬と移ろいについて、いくつかご紹介する。知られているようで知られていない、ちょっとした“トリビア”としても楽しんでいただきたい。
●シャコ
最高級品となるのは「脱皮直前の雄」(旬は11月中旬~12月上旬)と、子持ちのシャコ(旬は夏場)。
●ミルガイ
春と秋の2回産卵するため、旬は2回となる。
●トリガイ
1年物なら春~夏、2~3年物なら秋が旬となる。芳香な甘みと食感。
●エゾバフンウニ
産地によって旬が大きく異なる。夏は北海道日本海側の暖流系が旬、晩秋~春の終わりは道東・道南の寒流系が旬に。
●タコ
夏場の産卵を控えて身肉が肥える「夏ダコ」と、冬場の水温低下と共に餌を食い込み、産卵準備で水温低下の影響が少ない深場へ移動する「冬ダコ」の2つの旬がある
■取材 渡部美也
※週刊ポスト2012年12月14日号