国内

長谷川幸洋氏 大新聞のアベノミクス批判はいい加減にすべき

 安倍晋三首相が唱える経済政策に対して新聞各紙の社説はことごとく批判的な論調を展開している。これに対してジャーナリストの長谷川幸洋氏はこうした批判はあまりに言い古された話ではないかと指摘する。

 * * *
 安倍晋三政権が誕生した。最優先課題はデフレ脱却だ。外交立て直しも大事だが、経済が回復しなければそれもうまくいかない。かつて米国のクリントン政権は「経済こそが肝心なのだ、愚か者」というスローガンで政権交代を実現したが、安倍も同じである。

 ところが、主な新聞は安倍の政策に批判的だ。たとえば朝日新聞は「金融緩和は魔法の杖ではない」「収入が増えない家計が物価高を警戒して節約に走れば、景気はさらに悪くなる。企業に設備投資などの資金需要がない中で大量にお金を流しても、効果は乏しい」と社説で訴えた(2012年12月20日付)。

 毎日新聞も「(安倍が唱えた)『物価目標』には疑問と危うさを感じる」「政治家が金融政策に具体的な指示をし、中央銀行を操ろうとすれば、信頼を失いかえって目標達成が遠ざかる」と書いた(同21日付社説)。

 これらは、さんざん言い古された話である。新しい歌ならちょっとは「聞いてみるか」という気にもなるのに、まるで「昔の名前で出ています」みたいに歌うので、つまらなすぎて、まともに相手にする気にもなれない。

「魔法の杖ではない」と唱えた元祖は与謝野馨・元財務相である。その与謝野は政党を渡り歩いた末、政界を引退してしまった。なのに、新聞はまだ同じ歌を歌っている。少しは基本を勉強したらどうか。そもそも「これさえやれば万事OK」などという政策はない。「1つの課題に1つの政策」を割り当てるのは経済政策論のイロハである。

 まず金融緩和、それに拡張的財政政策を上乗せして景気を下支えしつつ、中長期的な経済全体の生産性を高めるために規制改革をする。これがスタンダードな処方箋である。前提の金融緩和がなければ後の話はうまくいかない。

「魔法の杖」論みたいな話を社説で掲げるのはクリスマスが近かったからと言ったって、いい加減にしたらどうか。そんなおとぎ話は、安倍を含めて緩和論者はだれも唱えていない。(文中敬称略)

※週刊ポスト2013年1月18日号

関連キーワード

トピックス

佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
若隆景
序盤2敗の若隆景「大関獲り」のハードルはどこまで下がる? 協会に影響力残す琴風氏が「私は31勝で上がった」とコメントする理由 ロンドン公演を控え“唯一の希望”に
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン