発達障害は脳の中枢神経系の発育がなんらかの理由で損なわれ、前頭葉のドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンの代謝が障害されたり、領域間のコネクションが弱であったりすることで様々の症状が起こるとされる。社会性、協調性、感情のコントロールなどがアンバランスになり、不適応が起こる。
幼少時から頻繁に不適応が遷延していると医療機関を受診することが多いが、発達障害は知的遅れを伴わないことがあり、大人になるまで“ちょっと変わった人”と思われるだけで気付かれないこともある。
大人の発達障害は大きく「自閉症スペクトラム障害」と「ADHD」に分けられ、中には混在している症例もある。「自閉症スペクトラム障害」は今まで自閉症や高機能自閉症、アスペルガー症候群などと分類され、新たに提唱された疾患概念だ。
本人が良かれと思ってやったことを周囲が歓迎していないことに気づかずキレる、想定の範囲が狭く想定外のことが起こるとパニックになる、人の気持ちがわからないなどが主な症状である。
「ADHD」は気をつけていても不注意が無くならない、衝動的に行動する、社会の規範や会社のルールから外れてしまうなどだ。
「自閉症スペクトラム障害の治療薬はありません。知的レベルの高い患者は、指摘すると自分で修正してうまく適応できるようになることもあります。通常レベルは認知行動療法や類似のアプローチで、じっくり治療していきます。しかし不適応を自覚できない患者は、治療を継続できないこともあります」(ランディック日本橋クリニック・林寧哲院長)
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年3月8日号