ライフ

4度目エベレストで無念下山の栗城史多 今秋の再挑戦明言

秋のエベレスト再挑戦への思いを語る栗城史多氏

 昨年10月、エベレスト登頂に挑んだ登山家の栗城史多さん(30才)。当初は“ニートのアルピニスト”と呼ばれながら、これまで「冒険の共有」をテーマに、単独・無酸素エベレスト登山と世界初のエベレスト登頂インターネット生配信に挑戦し、注目されてきた。4度目となった今回は、難しいとされる西陵側のルートに初挑戦したが、登頂アタックの途中、強風で断念。同時に手の指に重度の凍傷を負い指切断の危機にある彼に、現在の心境や再チャレンジについて聞いた。

――今回のチャレンジを振り返って現在の心境をお聞かせください。

栗城:後悔はしていません。凍傷にはなってしまいましたが、今回はまっさらな気持ちで登ることができ、初めてちゃんと山と向き合えました。少し無理してしまったという反省はあっても、そこからどうチャレンジしていくか、前に進むしかないなと。以前は落ち込むこともありましたが、今は後ろ向きの気持ちはないですね。

――頂上へ向けアタックをかけたときはどんな状況でした?

栗城:今回、アタックをかけた最後のキャンプ4(C4)までは体調も良く、あとは風が問題でした。秋のエベレストはジェットストリームという風速20~40m、強いときは45mもの風が吹くんですね。C4の7500m地点に行ったときには風は少しおさまっていたので夜7時に出発しましたが、夜中にどんどん風が強くなってきて、2回、体が飛ばされそうになりました。午後からさらに強くなるという予報だったので、危険と判断して迷いなく下山を選びました。

――今回は引き下がって、もう1回チャレンジしようと?

栗城:そうですね。エベレストに行くのは、お金の面も含めて大変なことで、何回もチャンスがあることではないですが、やっぱり生きていないとチャレンジもできないので。今までもこれ以上行くと危険だというときは、悔しいですが下りてきました。それはエベレストだからこそです。もし登頂だけを目指すのであれば、登頂率が上がる春に行きますが、ぼくが目指しているのは、チャレンジをするということです。本当に難しい局面を乗り越えて登頂したときに、本当の成功と言えると思います。

――現在、指の状況は?

栗城:外科医には、右手親指以外の9本の指の第二関節から先をもう切らなければいけないと言われていますが、凍傷になって半年間切らずにいた人もいるようなんです。本当に悪い状況だと指がぽろっと落ちるみたいですが、まだ落ちる気配はない。感染症になると死に至ることがあるらしいので切らなくてはいけませんが、今はそういう状況ではないので、再生医療だったり、奇跡にかけてみようと。やはり、9本失うと登山にもすごく影響しますし、自分の指は今までの登山や生活を含め支えてくれた“仲間”なので、今度は逆に守ってあげなきゃと思います。

――今はどんな治療をしているんですか?

栗城:高い気圧環境の中で高濃度の酸素を吸う高圧酸素治療は、毎日通って続けていますね。最近は、紫外線を除いた太陽光に近い光を手に当てる治療もやっています。ほかにも、骨髄から採った液体を指に入れて再生させる治療などいろいろな方法を探っています。

――治療を続けて快方に向かっていますか?

栗城:ちょっと前までは健康な部分も含めて指が腫れていて、感染しちゃうのかと思っていましたが、最近腫れが引いてきたので、これ以上は悪くはならないかなと思います。痛みも今はありません。1か月ぐらい前までは相当痛くて、痛み止めの薬を常に飲まないと1日やっていられないくらいで…。指は炭化して黒いところと良い細胞の境目が切れて、要はえぐれて肉がそのまま剥き出ているような感じで、以前はそこがチクチクして痛かったですね。今は安定してきています。

――トレーニングを始めて、今後の計画も立て始めているようですが?

栗城:本格的なものはまだまだこれからです。今は自宅で指に負担がかからないように体幹トレーニングをしたり、筋トレとヨガを混ぜたようなものをやったり。まずは指をちゃんと治して、できたら今年の秋に再びチャレンジできたらという思いはあります。

――期間をあけずに挑戦というのも体調が心配ですが…。

栗城:やっぱり秋に挑戦したい気持ちが強いです。秋のエベレストは、体力や実力のことよりも、針に糸を通すほど難しい天候条件のタイミングを合わせられるかが課題なんです。また西陵ルートで行きたいと思いますし、技術的にはそんなに問題はなさそうだったので、無風であればいけるんじゃないかなと思っています。やはり目標がないとけがも治らないと思いますし、ぼくは秋のエベレストを登って冒険を多くの人と共有することに全てをかけて生きている人間なので…。それがなくなると、ほかに趣味もないですし(笑い)。それを目標に、山登りやトレーニングを考えていこうと思います。

【栗城史多(くりき・のぶかず)】
1982年6月9日生まれ。北海道出身。大学生のときに北米最高峰マッキンリー(6163m)単独登頂を機に6大陸の最高峰を登る。2007年にチョ・オユー(8021m)から動画配信。2008年、マナスル(8163m)で山頂直下からのスキー滑降に成功。「冒険の共有」を目的としたエベレスト生中継登山のプロジェクトを立ち上げる。2009年、ダウラギリ(8197m)の6500m地点からのインターネット中継と登頂に成功。エベレストで酸素ボンベを使わず、ベースキャンプからひとりで登る単独・無酸素登山をテーマにしている。

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン