「きんは100シャア、ぎんも100シャア」—−そんな名セリフで日本中を沸かせた双子の100才、きんさんぎんさん。あれから20年が経ち、ぎんさんの4人の娘たちも今や平均年齢94才、母親譲りのご長寿だ。
「昨日ね、夕食の支度をしながらラジオを聴いてたら、ほら、カラオケがね、脳を刺激してボケ予防になるっちゅうてたがね。どうやろぅ、一回、みんなで行ってみんかねぇ」
お昼過ぎ、蟹江家にやって来た四女・百合子さん(92才)が、そう言って目を輝かせた。
三女・千多代さん(95才):「なに、カラオケ…? そんなシャラくせぇとこに、こんなババァたちが行ったら、みんなに笑われるだけだが」
五女・美根代さん(90才):「(しばらく思案した後)いや、何事も挑戦せんと始まらん。億劫がらんと出かけてみようか」
ところが、長女・年子さん(99才)は、2日ほど前から風邪を引いて体調が悪く、やむなく外出は控えることに。美根代さんの息子の嫁・万里さん(60才)に先導されて3人がやって来たのは、蟹江家から車で5分ほどの距離にあるカラオケボックス。大きなソファが2つ置かれ、最新の薄型テレビが壁に掛かった10畳ほどの一室に案内されると、歓声が上がった。
千多代さん:「ひゃあーっ、こんなところ、生まれて初めてだが。この部屋…、ホテルみたいに豪華だにゃあ」
それからマイクを持って歌うことになったが、なにしろ全員初体験…緊張しきってなかなか手が出ない。ようやく万里さんに促されて、千多代さんがマイクを握った。
千多代さん:「よーし、私の“十八番”。ご披露しまーす」
大川栄策のヒット曲『さざんかの宿』を歌い終えた千多代さんは、頬を紅潮させて満足顔。リズムや音程もバッチリでカラオケ機の採点では86点の高得点を叩き出した。ついで百合子さんが『高校三年生』(舟木一夫)、美根代さんが『青い山脈』(藤山一郎)を歌い上げて、カラオケルームは徐々に盛り上がってきた。
百合子さん:「ひとりじゃ、よう歌えんけど、みんなでやると、なんか次々と歌いたくなるだで、これぇ不思議だがね」
この日、初体験のカラオケで3曲ずつ歌った3姉妹の気分は、もうハイテンション。
東京都健康長寿医療センター副所長・高橋龍太郎さんは言う。
「カラオケはストレス解消にもなり、歌うことで大きく呼吸したり、お腹に力も入りますから内臓機能もよくし、運動と同じ効果を生み出すことになります」
千多代さん:「こんないい気持ちになるなんて、ここは極楽だが。そうだ、これからは歌を練習して、NHKの“のど自慢”に出てみるか(笑い)」
美根代さん:「けど、ほら鐘が“カーン”とひとつだったら、ショックでね、もう、落ち込んじゃうよぉ(笑い)」
※女性セブン2013年4月18日号