芸能

桂文枝氏 46年続いた三枝の名を捨てる決断できた理由を語る

 桂文枝。1943年(昭和18年)大阪府生まれ。関西大学卒業後、上方落語の桂小文枝(後の五代桂文枝)門下となり、三枝と名付けられる。創作落語に励む一方、若い頃から『ヤングおー!おー!』『新婚さんいらっしゃい!』『パンチDEデート』などテレビ番組の司会を担当して全国区の人気を獲得した。

 2003年に上方落語協会会長に就任し、上方落語の定席である天満天神繁昌亭のオープン(2006年)に尽力。そして、2012年7月16日、69歳の誕生日に、上方落語の大名跡である桂文枝(六代)を襲名した。

──文枝の名を継いで9か月ほどが経った。大名跡には慣れたか。

文枝:全国津々浦々を回る襲名披露公演は今も続いており、最終的には2014年3月まで20か月間にも及ぶのですが、46年間も三枝の名でやってきたので、いまだに文枝の名がしっくりこない部分もあるんですよ。周囲の目はともかく、自分としては文枝というと、どうしても師匠だった五代目をイメージしてしまいます。

──あらためて、文枝を襲名した理由を聞かせてほしい。

文枝:ひとつは使命感からです。桂文枝は、東京で言えば三遊亭圓朝に匹敵する大名跡で、江戸末期に活躍した初代は「上方落語中興の祖」と称えられ、五代目は戦後の上方落語界を牽引した方です。

 しかし、その五代目が2005年に亡くなってから、一般の人には名前が忘れられつつありました。そこで、今まで直系で受け継がれてきた大名跡を継ぐのは落語家としての使命だろうと思ったのです。継いだことによってマスコミの皆さんに文枝の名をずいぶん取り上げていただき、文枝が大名跡であることが一般の人にも知られるようになったのは嬉しいですね。

──46年間続き、全国区である三枝の名を捨てるのは非常に大きな決断だったのではないか。

文枝:おっしゃる通りです。せっかく三枝という名が全国に知られているのに、この歳になって捨てるのはもったいないという考え方もあるでしょう。実際、名前を変えることによって仕事が減るリスクもあるかと思います。しかし、桂三枝としては、落語の世界でもテレビの世界でもやるべきことはやった、という思いがありました。

 また、60代の終わりを迎えようとした時、三枝のままでいたら、若い時の自分と比較され、昔は若くて勢いがあったのに……などと言われかねない。そうならないために、人生の最後の直線に差し掛かった今、変化を求め、最後の挑戦をしてもいいのではないかという気持ちになったのです。

 60代の終わりでもまだまだ新しいことに挑戦できる年齢なのだと、自分に言い聞かせました。

※SAPIO2013年5月号

関連記事

トピックス

お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト