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「うっかり」で他人にケガ 不法行為として賠償責任免れない

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「押されて転倒。加害者はうっかりだと主張し、賠償に応じません」という質問が寄せられた。

【質問】
 先日、駅の階段を降りているときに押されて転倒。押した人は魚屋の店主で、謝りながらその場を去ったのですが、病院に行くと重い捻挫だと診断され、当人に文句をいうと「自分もうっかりこけてしまった。不可抗力の事故だ」と主張し、賠償にも応じません。この場合、法的に何とかなりませんか。

【回答】
 相手が文字どおりうっかりこけたのであれば、責任を免れません。なぜなら「うっかり」とは、ぼんやりしていたことをいいますが、ぼんやりとは、あることに気付かず、注意散漫になっている状態で、このような場合には不法行為として損害の賠償責任を負うからです。

 民法第709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています。

 故意にした行為で他人に損害を与えれば、責任があるのは当然ですが、「過失」とは一定の事実を認識することができたのに不注意で認識しなかったり、認識してその結果の回避ができたのに不注意でしなかったことをいいます。

 階段は平地と違って危険な場所です。階段を踏み外したりすると転んだりして下にいる他人にぶつかってケガをさせてしまうことが容易に予想されます。こうしたことをぼんやりして認識しなかったり、わかっても気を付けて昇降しなかった結果、起きた事故については、不法行為責任を負います。

 しかし、過失はケースバイケースですから、一概にはいえません。例えば、普通に降りていた相手が後ろから押されてこけた結果、あなたを押すことになったような場合には、不可抗力で責任がないか、少なくとも自分を守るためにはやむを得ない正当防衛として不法行為責任が否定されるでしょう。

 ご質問の場合、相手は「うっかり」と自認しながら、不可抗力と矛盾したことをいっています。基準になるのは、相手が普通の人の常識として駅の階段を昇降する際に心に留めておく程度の注意を払っていたかどうかです。うっかりこけたという状態を確認してください。不注意と思われる場合には不法行為責任があり、治療費等の賠償請求ができます。

※週刊ポスト2013年6月14日号

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