ビジネス

西武HD サーベラスTOB退けた代償は大きいと危機管理専門家

 西武ホールディングスをめぐるTOB騒動は、企業のあり方を考える上で大きなトピックとなった。危機管理の専門家であるリスクヘッジ代表取締役の田中辰巳氏の目にはどう映ったか。

 * * *
 米投資ファンドのサーベラスによる西武ホールディングス(以下西武)のTOB(株式公開買い付け)は、蓋を開けてみれば『大山鳴動して鼠一匹』というような結果となった。サーベラスは当初4%の買い増しという目標を掲げてTOBを開始したが、途中で目標を12%にまで引き上げた。しかし、結果的には3.1%しか買い増しできなかったからだ。

 この両社の戦いは、一見西武の勝利のように見える。しかし、本当にそうだろうか?

 戦争論のフォン・クラウゼヴッツ(ナポレオンを破ったプロイセンの武将)は、「戦争は目的を定めて最短の軌道を描くべし」という趣旨のことを述べている。従って、勝敗を決めるには、西武とサーベラスの辿り着いた目的地を見てみる必要があるだろう。

 そこで、この戦いによって両社が『失ったもの』と『得たもの』を洗い出してみよう。

■サーベラスが失ったもの
・強いファンドというイメージ
・西武の早期上場によって、投資資金を回収する機会

■サーベラスが得たもの
・傲慢な禿鷹ファンドというイメージを払拭できた

■西武が失ったもの
・また経営危機に陥ったときに、支援してくれるファンドが現れにくくなった
・サーベラスとの契約を一方的に解除したことによって、今後重要な契約を結ぶ相手が得にくくなった。サーベラスからの書簡の中身を漏らしたこともマイナスに働く
・サーベラスが西武の企業統治と内部統制に疑義を唱えたため、疑いの目が向けられ、上場に向けての監視や税務当局の目が厳しくなった
・沿線住民や首長を援軍に仕立てたために借りができたので、赤字路線の廃止や縮小という業績改善策を失った。バス路線も廃止や縮小ができない。また、西武ライオンズがお荷物になっても、売却ができなくなった
・西武の業績に関して、「下方修正」(3/26)をしたかと思えば、「過去最高益」(5/14)を発表するなどの迷走がクローズアップされた。経営陣の読みの甘さを露呈し、情報開示の信用を失った
・サーベラスからの訴訟リスクが高まった
・TOBに反対するため、新聞広告や中吊りなどに多額の経費がかかった
・週刊文春を告訴したために、文芸春秋社との関係が悪化した

■西武が得たもの
・当面、後藤高志社長が続投できる

 このように並べてみると、圧倒的に西武が失ったものが多いことが分かる。結局、危機管理という視点で見れば、西武の敗北と言わざるを得ないのだろう。西武の後藤高志社長には、西武を『将来性のある強い企業にする』という目的を持って、最短の道を行くためにサーベラスを利用するくらいの老獪さを持ってもらいたいものである。

トピックス

慶應義塾アメフト部(インスタグラムより)
《またも未成年飲酒発覚》慶大アメフト部、声明発表前に行われた“緊急ミーティング”の概要「個人の問題」「発表するつもりはない」方針から一転
NEWSポストセブン
物件所有者が貸し出しを止めるケースもある
《事故物件のリアル》「変色した血痕、体毛の塊…犬たちが死に物狂いで争った痕跡」ブリーダーの部屋で起きた“凄惨すぎる事件”
NEWSポストセブン
引退後の生活を語っていた中居正広
【全文公開】中居正広、15年支えた恋人との“引退後の生活” 地元藤沢では「中居が湘南エリアのマンションの一室を購入した」との話も浮上
女性セブン
性的パーティーを主催していたと見られるコムズ被告(Getty Images)
《裸でビリヤード台の上に乗せられ、両腕を後ろで縛られ…》“ディディ事件”の被害女性が勇気の告発、おぞましい暴行の一部始終「あまりの激しさにテーブルの上で吐き出して…」
NEWSポストセブン
2名の未成年飲酒が確認された慶應義塾アメフト部(時事通信/インスタグラムより)
《2年足らずで再度発覚》慶應アメフト部員、未成年飲酒で複数名が処分 同部が声明「厳正に対処いたします」
NEWSポストセブン
親方としてのキャリアをスタートさせた照ノ富士(写真・時事通信フォト)
【25億円プロジェクト】照ノ富士親方の伊勢ヶ濱部屋継承 相撲部屋建設予定地の地主が明かした「6階建てお洒落建物」構想
NEWSポストセブン
取材に応じる鈴木宗男氏
兵庫県知事選ほか「暴走SNS」と政治はどう向き合うか 鈴木宗男氏が語る「批判の集中砲火を浴びても生き抜くのに必要なこと」、ホテル避難時に “妻の深刻な心配”を実感
NEWSポストセブン
水原被告がついた「取り返しのつかない嘘」とは
水原一平被告がついた「取り返しのつかない嘘」に検察官が激怒 嘘の影響で“不名誉な大谷翔平コラ画像”が20ドルで販売
NEWSポストセブン
折田氏が捜査に対し十分な対応をしなかったため、県警と神戸地検は”強制捜査”に踏み切った
《「merchu」に強制捜査》注目される斎藤元彦知事との“大きな乖離”と、折田楓社長(33) の“SNS運用プロ” の実績 5年連続コンペ勝ち抜き、約1305万円で単独落札も
NEWSポストセブン
ギリギリな服装で話題のビアンカ・センソリ(インスタグラムより)
《露出強要説が浮上》カニエ・ウェストの17歳年下妻がまとった“透けドレス”は「夫の命令」か「本人の意思」か
NEWSポストセブン
四川省成都市のPR動画に女性社長役で出演した福原愛(写真/AFLO)
福原愛が中国で“女優デビュー”、四川省の“市のPR動画”に出演 バッチリメイクでハイヒールを履きこなす女社長を“快演”、自虐的な演出も
女性セブン
車に乗り込む織田裕二(2025年1月)
《フジテレビ騒動の影響》織田裕二主演映画『踊る捜査線 N.E.W.』、主要キャストに出演を打診できないままピンチの状態 深津絵里の出演はあるのか
女性セブン