国際情報

格差広がる韓国「両親から小遣い貰うのがつらい」と若者嘆く

 サムスンやLGなどが世界市場を席巻しているが、その一方で韓国国内では信じられないほどの格差社会が急速に広がっている。その現状について、ジャーナリストの対馬守氏が解説する。

* * *
 昨年12月、私は大統領選挙の翌日に韓国を訪ねたが、朴槿惠新政権への期待を語る韓国人はほとんど皆無だった。彼らは一様に疲労感を漂わせ、希望が見出せない将来を嘆いていた。

 その背景には相対的な貧困感がある。現在の韓国では日々の食事に事欠くような深刻な貧困はほぼ解消されている。その代わり、学歴や年齢に見合うような、あるいは他人と同じような地位や収入が得られないことに、国民の多くが苛立っているのだ。

 給与所得の格差が拡大した理由は、非正規職(契約・派遣勤務)の割合が大きいことと、大企業と中小企業の給与に大きな開きがあるためである。

 中小企業中央会が発表した『2013・中小企業位相指標』によると、中小企業の月平均給与は大企業の6割に過ぎない。最近ではサムスンやLGなど輸出関連企業で働く者と、それ以外の産業で働く労働者との賃金格差はさらに拡大している。

 また韓国は大学・短大進学率80%を超える超学歴社会だが、大卒者の失業率は38%に達している。職を得たとしても正社員ではなく契約社員や派遣勤務である場合が多い。そうした雇用条件で働く若年層に話を聞くと、

「雇用が不安定で給与も少ない非正規職で一生暮らしていくと考えると絶望的になる」
「働きながら公務員試験を準備しているが、合格できるかわからないため結婚など考えられない」
「両親からいまだに小遣いをもらっているのがつらい」

 といった声が聞こえてくる。さらに契約社員や派遣勤務よりも劣悪な労働環境に置かれているのが、コンビニなどで働くアルバイトだ。

 法定最低時給は4860ウォン(5月29日時点のレートで437円)だが、大部分のコンビニは法を無視し、4500ウォン(同405円)以下しか支払わない。事実上、「最低賃金が最高賃金」状態なのである。

 こうした若者たちの多くが親元で生活するか、大人数で安アパートを借り、シェアすることで居住スペースを確保している。

※SAPIO2013年7月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
素材はピカイチとされたが…
【オコエ瑠偉が巨人を電撃退団】「阿部監督一強体制」で反発は許されなかったか メジャー移籍は厳しい現実、“ランクを下げながら海外移籍を模索”のシナリオも
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン