国内

捜査情報のリーク 検事宅で夜食用意し帰りを待つ記者も存在

 監視される側とする側であるはずの検察とメディアの“共犯関係”はどう生まれるのか。その接着剤となるのが捜査情報の「リーク」だ。知られざるリークの裏を、ジャーナリストの伊藤博敏氏が明かす。

* * *
 繁華街の少し外れにある薄暗いバーのカウンターで、眼光の鋭い壮年男性と30代後半の働き盛りの男性がこんな“禅問答”をしている。

「来週あたりですかね。忙しくなるのは?」
「何が?」
「いや、国会も今週で終わり。やりやすくなると思って」
「……」
「ウチはそれで打とうと思っているんですよ」
「いいんじゃないの。よく調べてるし……」

 バーテンにも隣の客にも何の話かわからないが、これが大手紙記者と特捜検事のやり取りなら、記者が「会期中の国会議員の不逮捕特権が切れて、来週には捜査着手」とお墨付きをもらったことになる。

 特捜検察が記者クラブメディアに都合のよい情報を流して記事を書かせる「リーク」が近年注目されているが、捜査官がわかりやすく記者にレクチャーしてくれる場などない。

 退勤後のバーや出勤前の日比谷公園などで冒頭のようなやり取りが繰り返され、記事が作られていく。言ってみれば阿吽の呼吸だ。

 東京地検特捜部は3班に分かれ、副部長が班長として10人前後の検事を指揮。特捜部長が統括する。記者は暗黙のルールで現場検事との接触を禁じられ、その代わりに副部長以上の幹部が毎日会見や個別面談に応じる。が、それだけではスクープは取れない。

「検事と一対一の人間関係を築けるかが記者の腕の見せ所です。そのためには事件の持ち込み、人脈紹介、資料収集、ハイヤーでの送り迎えとなんでもやる。昔は単身赴任の検事の自宅の鍵を預けられ、毎晩のように夜食を用意して帰りを待っていた先輩もいました」(ベテラン記者)

 取材努力は当然あっていいが、問題はこうして得た捜査情報が記者にとっては特ダネとなり、秘密を共有する感覚から取材対象への批判的検証の目線が失われていくことだ。

 権力は腐敗する。そのため、国家には権力の監視役が必要だという使命感を特捜検事は持つ。そして記者は腐敗した権力者の姿をあまねく報道することを使命とする。そういう意味で検察と司法マスコミは一体感を持ちやすい。

 数ある記者クラブの中でも、司法マスコミほど検察=取材対象に忠実なところはないだろう。しかし、その検察そのものが強大な権力であることを忘れてはならないはずだ。

※SAPIO2013年8月号

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
大河撮影前に2人で北海道旅行をしたという(時事通信フォト)
吉高由里子、セレブ恋人との結婚は『光る君へ』クランクアップ後か 交際は事務所公認、大河スタッフも“良い報告”を楽しみに
週刊ポスト
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン