大小合わせて全国3000か所で開催される花火大会。江戸時代に庶民の楽しみとして定着して以来、夏の風物詩として今に続く。
一瞬の美──。そこに心血を注ぐのが「花火師」と呼ばれる人々だ。花火作りは手作業が基本。花火師に憧れる若者は後を絶たないが、一人前になるには早くて3年、という厳しい職人の世界だ。
この道に進み、40年以上の花火師、野村陽一さん(野村花火工業社長)も、「これで満足、ということがない」という。
「花火師の世界は茶道のように流派があって、名人と呼ばれる師匠について学びます。私自身は流派に属さず、花火師だった父の教えと独自の研究で花火を極めようとしましたが、思った色を出すことさえうまくいかない。花火競技会に出品しても『闇夜のカラス』と揶揄されました。全国大会で優勝するまでに、かれこれ20年近くかかってしまいました」
花火競技会の最高峰は大曲(秋田県)と土浦(茨城県)。野村さん率いる野村花火工業は総合優勝を10度以上なしとげている。その花火師・野村さんの作り出した“究極の花火”が、10号玉の「五重芯」だ。外側の親星を数えないので「五重芯」と呼ばれるが、直径約30cmの10号玉の中に、6重の層ができている。サイズ的にこれが限界だ。
撮影■佐藤敏和
※週刊ポスト2013年8月9日号