「カネがかかって縛りもある墓には入りたくない」──“そもそも墓なんていらない派”が増えている。散骨は1991年、「NPO法人葬送の自由をすすめる会」が「自然葬」として神奈川県相模灘沖で実施し、法務省、厚生省が「節度をもって行なわれるのなら違法ではない」との見解を示したことで急速に広まった。同会会長で宗教学者の島田裕巳氏が説明する。
「自然葬には遺骨を自然に還したいという思いが込められています。当会では遺骨を粉にして自然に優しい水溶性和紙に包み、海に撒いた後、『自然葬証明書』を発行しています。何組かで行なう特別合同葬が基本で、墓を造らないわけだから、自然葬以外の費用はかかりません。個別にやる個人葬という形態もあります。自然葬は実にあっさりしたもので、法事法要も伴いませんし、寺との檀家関係も要りません」
ペットと一緒の散骨を希望する人のためのパッケージプランもある。山、川、湖での散骨も行なわれているが、山では土地の所有者の許可が必要なので場所は限定される。
新しい散骨を商品化した業者もいる。バルーン工房(栃木県宇都宮市)は「バルーン宇宙葬」を売り出し中だ。遺骨を特殊な方法で天然ゴム製の直径2.5mのバルーンの中に入れて上空に飛ばすというもの。上昇したバルーンは約90分後、高度30~35kmの成層圏に達して炸裂する。遺骨は大空に散骨され、偏西風に乗って遥か彼方まで漂うという。料金は一人18万8000円。小野寺義博社長の話。
「もともと結婚式場などで風船を飾る仕事をしていますが、4年前からバルーン宇宙葬を始めました。基本的に近くの駐車場から飛ばすことが多いですが、公園や河川敷から飛ばすこともあります。回数は月3~4回。予約も十数人入っています。お客さんは跡継ぎがいない方が多いです」
※SAPIO2013年8月号