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日本マクドナルド再生 安売りで疲弊した牛丼の轍は踏まない

「原田マジック」の神通力もついにここまでか――。2004年にアップルコンピュータ(現・アップル)から畑違いの日本マクドナルドに転身し、8年連続で増収を達成したことから名経営者の誉れも高かった原田泳幸氏が、事業会社の社長を降板することになった。

「新しい経営タレントを投入したマネジメント強化で退任ではない」。8月27日の会見でこう繰り返したという原田氏だが、引責辞任と取られても仕方ないほど同社の業績は芳しくない。経済誌『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏が語る。

「今年1~6月の中間決算発表では、クォーターパウンダーBLT/ハバネロトマトや1000円バーガーといった高価格帯商品を出したおかげで客単価こそ前年比で7.5%伸びましたが、客数がマイナス9.5%と振るいませんでした。このままいくと2年連続でマイナス成長となるのは濃厚です」

 原田氏はこれまで「100円マック」や定番のバーガー類を期間限定値下げするなど、低価格のサプライズ商品で集客を図り、サイドメニューやセット注文で客単価を上げていく“勝利の方程式”でデフレ時代を乗り切ってきた。だが、それが通用しなくなったことは、原田氏自身も認めていることだ。

<ビッグマックのような商品を、ディスカウントして200円で売るということを年に数回、1週間ずつやっていくと、一時的にはお得感が上がります。でも、繰り返しやっていると、お得感がだんだん下がってきます。これはたぶん、牛丼チェーンがやってきたことと同じなんですよ>(『月刊BOSS』10月号インタビューより)

 また、8月9日に開かれた決算説明会では、こんなことを言っている。

<ボーナスが増えたからマックに行く回数を増やすとは考えにくい。グレードを上げて、デパートのレストラン、さらに上の、ホテルのレストランにシフトしたような現象が起こっているかもしれない>

 アベノミクスによる景気回復基調で、外食業界にも高級志向が漂っていることは当サイトでも度々報じてきた。ならば、マックはこの先、高級ハンバーガーチェーンに生まれ変われば客足も戻るのかといえば、それほど単純な話ではない。日本フードアナリスト協会所属のフードアナリスト、重盛高雄氏がいう。

「高価格のバーガーをたくさん出せば、興味本位の新しいお客さんを引き込めると思いますが、従来の固定ファンを裏切ることになります。価格相応で手頃な商品が揃っているというファストフード本来のあり方を再度見直すべきだろうと思います」

 この「価格相応」こそ、マック復活のカギを握ると重盛氏はみている。

「今まで100円バーガーの中身も変えずに値上げをしたり、以前にもあったような商品の具材だけ入れ替えて新商品にしたりと、価格や品質の整合性が取れなかったことが客離れの一番の原因。言い方は悪いですが、今後、低価格メニューはそれなりの味でも構わないから、その分、高価格バーガーやセットメニューは品質にこだわるなど、より価格の妥当性をシビアに訴える割り切った商品戦略が必要ではないでしょうか」(重盛氏)

 事業会社の新社長にはマクドナルド・カナダを皮切りに、マレーシアやシンガポールなど世界のマクドナルドを統括してきた外国人女性のサラ・カサノバ氏が就く。常々、米国本社とのグローバルな連携を視野に入れてきた原田氏だけに、今回の人事によって、より米国流の商品展開やサービスに寄ることも考えられる。

「ニューヨークなどのマックに行けば気付きますが、それこそ安いハンバーガーは味や酒類よりもボリュームで勝負。ポテトのサイズはすべて日本のLかLL、ケチャップやコーヒーに入れるミルクなどはすべてセルフサービスと、日本のマックよりも大雑把です。

 こうした米国本社のオペレーションやメニューの改廃などを参考にしながら、モスバーガーの『ライスバーガー』のように、日本人の好みや時代のニーズに合った商品をどれだけ出していけるかが勝負の分かれ目だと思います」(重盛氏)

 店舗閉鎖を進めているとはいえ、日本のマックは米国に次ぐ店舗数を誇り、世界戦略には欠かせない拠点となっている。

 原田氏は引き続き、持ち株会社の責任者として経営全般を統括する立場にはあるが、「このまま業績の落ち込みが止まらないなら、米国本社の原田氏への風当たりはますます強くなる」(前出・河野氏)との見方はもっぱらだ。

 原田氏自身の威信もかけ、マック再生は正念場を迎えている。

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