【マンガ紹介】
『河童の三平』/水木しげる/ちくま文庫/1260円
『バタアシ金魚』/望月峯太郎/講談社/630円
過日の「世界水泳」では19才の瀬戸大也選手が金メダルを獲得!! というニュースに大いに盛り上がりました。水着すら持っていないほぼカナヅチの私でも水泳に(水泳男子に?)ぐぐっと気持ちが引き寄せられます。というわけで、今回はマンガの水泳男子2名をご紹介。
まずは、水木しげる『河童の三平』(ちくま文庫)の三平くん。瓜二つの河童が三平になりすまして、小学校の水泳大会に出場。世界記録を樹立してしまったことから、周囲の期待は東京オリンピック出場へと高まるばかり。実際はカナヅチの三平くん、大ピンチ!
河童が三平に教えたのは「へ」(屁)の力を利用して泳ぐこと(河童には肛門が3つあるそうですよ)。県大会でオナラ泳法が成功し、国体出場へ…でも河童がプレゼントしてくれた「ロケットいも」を食べすぎたため、水に飛び込んだつもりが、空中をビビビビビと一直線に飛んでゴール。三平は世界新記録を達成するも、失格になるのでした…。子供の妄想とか悪ふざけがそのまま描かれたようなこの泳法に、思わずにんまり。
もう一人は、私にとっての永遠のアイドルスイマー、望月峯太郎『バタアシ金魚』のカオル。ひとめぼれした女の子・ソノコが所属する水泳部にド素人で入部。当然最初は泳げるはずもない。でも速く泳げるようになりたい&ソノコに好かれたいというシンプルな欲望のために鼻血を出したり中耳炎になったりしながらも徐々に頭角を現していきます。
カオルの選手としての凄さは、なんといってもその負けん気の強さ。全然速くもないのに、格上の人を前にすると勝負したくて「うずうず」「じりじり」が止まりません! あげくの果てに「水泳やってるとオリンピック行けんだぜ」と真顔で言い放ちます。すがすがしいまでの(無根拠な)自信と過剰な自意識…!
周囲がどう思おうと、好きなように暴れまくり、自分の行きたい方向へ着実に進むカオルを見ていると、何かで頂点を目指す時には、もしかしたらこんな思い込みこそが必要なのかもしれない、と思えてきます。
(文/門倉紫麻)
※女性セブン2013年9月12日号