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長野県 県民収入は25位だが幸福度ランキング総合1位の理由

 2012年に幸福度ランキングで1位を獲得した長野県。県民収入は都道府県の中で25位なのに、なぜ幸せと感じるのか。長野県に住む、諏訪中央病院名誉院長で『がんばらない』著者の鎌田實氏が、長野県の幸せの秘密について解説する。

 * * *
 僕が住んでいる長野県は、高齢者が多い割に医療費が安い。この理由を追究しようと、国民健康保険中央会は研究会を作り、数年にわたって調査した。

 その結果、減塩運動を成功させたこと、野菜の摂取量が日本一になったこと、保健補導員というヘルスボランティアが充実して住民自身の自治で健康づくりが行なわれたこと……これらいくつかの要因が複合的に作用して、長寿だけれど医療費が安いという、理想的な状況が作り出されたと説明している。

 それ以上に大きな影響を与えているのが、高齢者の就業率が日本一高いという点だ。高齢者の仕事の多くは農業である。農業王国の北海道と比べると、長野県の農業の規模は格段に小さい。しかし、小さな農業だからこそ、高齢になっても継続できるのだ。たとえわずかな収入であっても、収入があることが生きがいにつながる。自分のお金で孫にお小遣いもあげられるし、仲間たちと日帰り温泉を楽しむこともできる。

 長野県では、お年寄りが働くという生きがいを持っているから、病院をサロン代わりに利用したりしない。

 2012年の日本総研の調査で、都道府県別の幸福度ランキングが発表された。長野県は、健康、文化、仕事、生活、教育部門の総合で1位になっている。1人当たりの県民収入は25位で、けっして豊かではないが、それでも県民は「幸せだ」と感じている。

 90歳になっても“作物を育て収穫する”という生きがいがあるから、医療保険や介護保険を利用しないで、幸せで健康で長生きができている。日本全国すべての県が長野県のようになれば、医療費がうなぎ上りにはならず、国民皆保険制度が維持でき、世界一の長寿国になると、先の研究はまとめている。

●鎌田實(かまた みのる)1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。ベストセラー『がんばらない』、新刊『がまんしなくていい』(集英社)ほか著書多数。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。

※週刊ポスト2013年9月13日号

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