ビジネス

少額投資非課税制度NISA 来年の導入に向け顧客獲得競争過熱

 銀行・証券業界では、2014年からスタートする少額投資非課税制度、愛称『NISA』(ニーサ)に向け、顧客獲得競争が過熱している。そうした販売会社の動向を受け、運用会社では、新しいタイプの投資信託の設定が相次いでいる。リッパー・ジャパン、ファンドアナリスト篠田尚子氏が解説する。

 * * *
 ここに来て設定が相次いでいるのは、「リスクコントロール型」と呼ばれるものだ。リスクコントロール型は、基準価額の下落リスクを抑えながら、安定的なリターンを狙うことを目的としている。従来、安定的なリターンが狙えるものとしては「バランス型」があったが、リスクコントロール型は、バランス型よりもリスクを低減させることを強く意識している点が大きな違いだ。

 例えば、通常のバランス型は、あらかじめ決められた投資割合で複数の金融資産に投資し、リスク分散を図るものがほとんどだった。一方、リスクコントロール型は、「基準価額の下落を極力避ける」ことが前提条件になっているので、運用方針も細かく明示されている。

 基準価額の下落を避けるためのリスク低減の具体的な方法としては、まず為替ヘッジが挙げられる。リスクコントロール型の中で海外資産に投資をするタイプのファンドには、純資産の7割を対円で為替ヘッジを行なったり、先進国通貨の部分だけを対円でヘッジするものがある。為替の変動リスクを極力抑えることを目指している。

 また、運用会社独自の戦略によって、機動的に資産配分を変えることで、基準価額の下落を抑制するタイプや、株式先物に投資をして、ヘッジファンド的な手法で絶対収益を追求するタイプもある。

 なぜ、リスクコントロール型がNISAでの運用に向くとされているのだろうか。NISAでは、いったん購入した投資信託を解約(=売却)することは自由だが、売却部分の枠の再利用はできない。NISA口座の年間投資上限枠は、1人100万円までとされており、例えば2014年1月に100万円で投資信託を購入したとすると、枠をすべて使い切ったことになる。その半年後に50万円売却しても、その50万円の枠は再利用できない。

 したがって、リバランス(投資配分比率の調整)ができる投資信託であっても、確定拠出年金制度のように、投資家がリバランスを行なうことは認められていない。リバランスは売却と見なされてしまうからだ。

 また、NISAの非課税期間は最長で5年間。もし、購入した金融商品に損失が発生し、非課税期間が終了してしまうと、非課税のメリットが使えないどころか、他の課税口座で保有する金融商品との損益通算や、翌年以降への損失の繰り延べができないといった、デメリットが生じてしまう。

 つまり、NISAは損失に弱く、購入した投資信託に大きな損失が発生すると、身動きが取れなくなる可能性があるのだ。したがって、NISAに向く投資信託とは、前述のように、基準価額の下落リスクを抑えて安定的なリターンが狙えるもの、となるのである。

 だが、これは金融機関の戦略も影響しているといえそうだ。金融機関は、NISAでは、これまで投資や資産運用の経験が無い、あるいはそれに近い運用のビギナー層の獲得を第一にしていると想定される。

 そうした顧客層は、金融商品でリスクを取ることに慣れていない。したがって、なるべく下落リスクを抑えたものが向く、という考え方になる。資産運用の経験がある人にとっては、リスクコントロール型は物足りないと思うかもしれない。

※マネーポスト2013年秋号

関連記事

トピックス

モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
《交際説のモデル・Nikiと歩く“地元の金髪センパイ”の正体》山本由伸「31億円豪邸」購入のサポートも…“470億円契約の男”を管理する「幼馴染マネージャー」とは
NEWSポストセブン
保護者責任遺棄の疑いで北島遥生容疑者(23)と内縁の妻・エリカ容疑者(22)ら夫妻が逮捕された(Instagramより)
《市営住宅で0歳児らを7時間置き去り》「『お前のせいだろ!』と男の人の怒号が…」“首タトゥー男”北島遥生容疑者と妻・エリカ容疑者が住んでいた“恐怖の部屋”、住民が通報
NEWSポストセブン
学業との両立も重んじている秋篠宮家の長男・悠仁さま(学生提供)
「おすすめは美しい羽のリュウキュウハグロトンボです」悠仁さま、筑波大学学園祭で目撃された「ポストカード手売り姿」
NEWSポストセブン
モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
「港区女子がいつの間にか…」Nikiが親密だった“別のタレント” ドジャース・山本由伸の隣に立つ「テラハ美女」の華麗なる元カレ遍歴
NEWSポストセブン
米大リーグ、ワールドシリーズ2連覇を達成したドジャースの優勝パレードに参加した大谷翔平と真美子さん(共同通信社)
《真美子さんが“旧型スマホ2台持ち”で参加》大谷翔平が見せた妻との“パレード密着スマイル”、「家族とのささやかな幸せ」を支える“確固たる庶民感覚”
NEWSポストセブン
高校時代の安福容疑者と、かつて警察が公開した似顔絵
《事件後の安福久美子容疑者の素顔…隣人が証言》「ちょっと不思議な家族だった」「『娘さん綺麗ですね』と羨ましそうに…」犯行を隠し続けた“普通の生活”にあった不可解な点
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン
生きた状態の男性にガソリンをかけて火をつけ殺害したアンソニー・ボイド(写真/支援者提供)
《生きている男性に火をつけ殺害》“人道的な”窒素吸入マスクで死刑執行も「激しく喘ぐような呼吸が15分続き…」、アメリカでは「現代のリンチ」と批判の声【米アラバマ州】
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン