男性上司と女性部下をめぐるセクハラ事件が新聞やテレビを賑わす今日この頃──。もし訴訟になった場合、男はどう戦えばいいのか。
中堅メーカーで課長を務めるA氏は、会社の宴会の席で、「よかったら君も二次会に参加しないか」と言って女性部下を誘った。すると女性が「二次会への参加を強制された」と言い出し、セクハラで訴えたという。納得がいかないA氏は弁護士を立てて、法廷で争うことを決意した。
「結果、裁判所はA氏の行動は問題だとしながらも、損害賠償命令までは出さなかった。その理由は、セクハラが行なわれたとされる場所が“宴会”で、他の参加者たちがA氏を擁護する証言をしてくれたからです」(担当した弁護士)
A氏のケースから学びとれる教訓は、まず第一に「女性部下と2人きりになる展開を避ける」こと。マンツーマンの場合、他に証人がいないことに加え、「上司の誘いを断わったら業務に支障をきたすかもしれない」という女性側の心理が認定されやすくなるからだ。
リーガルパートナーズ法律事務所の川島浩弁護士がアドバイスする。
「密室で行なわれた、1対1の行為に対しては被害者側の言い分が信じられやすい。これは飲み会に限らず、会社で業務上の指導をする場合でも同じ。密室ならドアを開け放しておくとか、第三者に立ち会ってもらうなどの配慮が必要です」
ただし、あまり多くの人を立ち会わせると、今度は大勢の前で恥をかかせたとして「パワハラだ」と訴えられかねない。だから、
「信頼できる人を1人だけ立ち会わせるのがいいでしょう」(アディーレ法律事務所の刈谷龍太弁護士)
もうひとつの教訓は「日頃から味方をつくっておく」ことだ。A氏のケースでは、居合わせた他の社員たちが「A氏にセクハラの意図はない」と援護射撃してくれたことが大きかった。
「裁判の場合、お互いに証人を出してくることもある。職場で孤立しているような人は不利になります」(同前)
もちろん、セクハラのつもりはまったくなくても、身体的な接触は御法度だ。
「女性部下を叱責したところその女性が泣きだしてしまったため、上司が思わず頭を撫でた。それがセクハラだと女性が会社に訴え出たケースもある」(同前)
結局、この男性上司は異動させられたという。「なぐさめるために頭を撫でるのもダメなのか」と思う男性もいるかもしれないが、若い女性の場合、頭を撫でられることに強い嫌悪感を覚える人も多い。
※週刊ポスト2013年11月1日号