なにげない大学案内でも、学校の個性を伺うことが出来る。案内でどれだけ学長が熱心に喋っているのか、調査がある。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が解説する。
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秋です。高校3年生たちは受験を控え、ドキドキしています。そろそろ志望校を最終決定する時期ですね。ちなみにすでに、推薦入試・AO(アドミッション・オフィス)入試などは行われております。私が非常勤講師をしている大学でも、入試が既に行われており、「◯◯学部試験会場」と書いた看板をよく見かけます。
大学選びと言えば、貴重な情報源の一つが「大学案内」です。いわゆる、大学のパンフレットだと思ってください。大学、学部の紹介、カリキュラムの紹介、教授や在校生やOB・OGの声、就職実績などが掲載されています。
さて、この大学案内で、学長はどれだけ語っているのでしょうか?実は、「大学案内で、学長は、何文字しゃべっているのか?」をまとめた調査があるのです。
この調査は、アロー教育総合研究所という期間が2011年の夏に、2012年度版大学案内701冊について調べたものです。なお、現在、日本には約780校ありますから、かなり網羅していると言えます。
学長メッセージは、調査対象の701校のうち、606校に掲載されていました。国立大学は96%、公立大学が76%、私立大学は86%が掲載されています。平均文字数は、国立大学が790文字、公立大学が704文字、私立大学が570文字でした。私立大学の方が創始者のエピソードや、建学の理念などを熱く語りそうだなと思っていたのですが、意外な結果だと言えますね。
では、全国で最も長く話した学長はどこの学長でしょう? 1位は、愛知県の私学の雄、南山大学で、なんと6500文字です。私大の平均の約11.75倍ですよ。ちなみに、国立では、旭川医科大学が2879文字、公立大では長野県立看護大学が1470文字でした。
逆に日本で最も短い挨拶は、日本歯科大学という私立大学で15文字。まさに、ご挨拶程度ですね。国立では愛媛大学が106文字、公立大学では秋田県立大学が48文字でした。
気になる内容ですが、主に建学の精神や、学校の特徴、自分の教育スタンスなどに関するものが多いわけですが、中には、空襲や終戦の思い出など、自分の体験、想いを述べる方もいらっしゃいます。
なお、表紙を開いたら、学長がでてくる学校は176校でした。
一方、学生は、学長メッセージを重視しているのでしょうか?「良い」と思う大学案内の基準で、「建学の理念や教育目標、学長先生からのメッセージが掲載されている」をあげた学生は70%でした。大学案内でこだわる項目のうち6位となっています。低くはないですが、圧倒的上位ではありません。
とはいえ、これもまた大事なコンテンツだと言います。というのも、推薦・AO入試においては入学の動機などに関する作文や面接があるので、この学長メッセージは参考になるからです。
なお、大学案内は、豪華なものは極めて豪華です。日本一分厚い大学案内は東京家政大学でなんと454ページあるとか。都道府県別で言うと、人口に占める学生の割合においては、東京に大差をつけて一位となっている京都府が最も分厚く、平均103.2ページでした。
今どきの大学案内。皆さんも、出身校や、ご家族が通っている大学のものをチェックしてみてはどうでしょう?