芸能

森永卓郎氏 上級生に昆虫採集網盗まれ母と共に奪還した過去

 母はどんな時も無償の愛で包んでくれた。その偉大さを知ったのはいつのことだったか。慈母の記憶はいつも、懐かしい温もりとともに甦る。ここでは、経済評論家の森永卓郎氏(56)が母・トシさんとの思い出を振り返る。

 * * *
 父は新聞記者でしたが、決して裕福な家だったわけではありません。母はちょっとした日用品なら全部自分で作って、少しでも家計の負担を減らそうとしていた。今思えば必死で生きていたんだなァと思います。そんな暮らしですが、僕は小学1年生の時に、昆虫採集の網が欲しくなったんです。

 オニヤンマは駄菓子屋で売っているような安物の網だと捕獲できない。それで、本職の方が使用するような高級網を、デパートで母に買ってもらった。僕にすれば、1年にあるかないかのプレゼントでした。

 ところが公園に行くと、すぐに近所の上級生に網を取り上げられてしまった。泣きながら帰ると、母に「簡単に諦めるんじゃない」と叱られました。それから、数週間、母に連れられて毎日公園通いですよ。網を奪い返すために。

 やっと上級生を捕まえて母が取り返してくれた。貧しい我が家にとって高価な網だったこともあるが、母の執念に、絶対に諦めないことの大切さを学びました。そのためか、僕は幼稚園から大学まで、たとえ40度以上の熱があっても1日も休んだことがないんですよ。

 小太りで、父の仕事の関係で欧米にいたこともあって、学校では格好のいじめの対象でしたが、耐えることができた。今もテレビで好きなことをいって、“いじめ”にあっていますけど(笑い)、諦めないでいいたいことをいえているのは、そのおかげ。

 母は私がいじめられていると、飛んできて介入するような人でした。子供の頃は親が関わると余計にいじめられて嫌でしたけど、思い返せば、いじめの最終的な歯止めになっていたかもしれません。

 とにかく、我が子が大好きな母でした。東大に合格した後は、合格者の氏名を掲載した雑誌を大量に買い込み、テレビ番組に出演し始めたころは本当に嬉しそうでした。“我が子自慢”の母が、私の母親像ですね。

■森永卓郎(もりなが・たくろう):東京都生まれ。専門の経済分野だけでなく、サブカルチャーなど幅広い評論を行う。

※週刊ポスト2013年11月8・15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン