ビジネス

大塚製薬「ソイカラ」最適形状探るため音響研究所に分析依頼

 大塚製薬のヒット商品といえば、『ポカリスエット』や『カロリーメイト』があるが、それらに次ぐ人気となっているのが大豆スナック菓子の『ソイカラ』である。このお菓子、なんと玩具から開発の着想を得たという。作家の山下柚実氏がソイカラの開発秘話に迫った。

 * * *
「カラカラ、カラカラ」と不思議な音が響いた。近所のスーパーで初めて買った『ソイカラ』を自転車のカゴに入れて帰る途中のことだ。帰宅してさっそくパッケージを開けると、爪より少し大きめの半月形をした褐色の物体が出てきた。指でつまみ出そうとするとまた「カラッ」と鳴る。ためしに振ってみた。まるで小さなマラカスだ。

 おもしろい。こんな不思議なスナックは初めて。噛むと生地がパキっと壊れて、中から小さな玉が転がり出た。味はあっさり。塩味は薄めで、穀類の芳ばしい風味が口の中に広がっていく。カラカラ音や割れる食感が面白くて、もう一個口に放り込んだ。

 2012年4月に発売された「チーズ味」に加えて、この10月、「のり納豆味」、「オリーブオイルガーリック味」が新発売された大塚製薬のソイカラはコンビニ、スーパー、ドラッグストアで男女問わず人気。大豆から作られたスナックだという。他に類を見ない個性的な形と素材からできたこの商品は、どうやって生まれてきたのだろう?

「開発者はマトリョーシカをヒントにしました」

 と同社ニュートラシューティカルズ事業部・田中拓野氏(33)は言った。マトリョーシカですか? ロシアの定番お土産、入れ子人形の……。確かに、「中に何かが入っている」というおもしろさは共通している。ただ、マトリョーシカは玩具。これはスナック。「遊び道具」から製品を着想することもあるのですか?

「いえ、基本的には機能性を重視する、まじめな雰囲気の会社でして……開発者は『遊びじゃないんだぞ』と注意されたこともあるほどです」

 ところが、その言葉をもって開発者は「成功」とふんだらしい。

「『遊んでいる』と思われるほどの製品ができた、ということです。ソイカラの開発コンセプトは『笑顔を作り出す楽しいスナック』。だから、遊び心は大切な要素になるんです」

 でも、スナックになぜそこまで「楽しさ」を求める必要があるのか。 実は大豆という原料に理由の一つがある、と田中さんは続けた。

 ソイカラの主原料はまるごと大豆だ。一袋が大豆約50粒分。小麦粉などは一切使わず、大豆を粉にして特殊な製法で熱して膨らませている、という。

「中に入っている2つの粒も、同じように大豆から作りました。栄養価の高い大豆という素材に、弊社はとことんこだわってきたんです」

 しかし、大豆の魅力を再認識するのはなかなか難しい。あまりに身近すぎて「健康に良い」と分かっていても積極的に食べてもらえない。

「それなら楽しい気分になる大豆の商品を作って、自然に食べていただこうと。音が鳴る形状も、そこから生まれてきたんです」

 心地よい響きにするために粒の大きさや固さはどうしたらよいか。試作を繰り返し、音響専門の研究所に分析してもらって、最適な形状を探っていったという。

 音にそこまでこだわる一方で、味に強い印象を感じないのはなぜですか?

「毎日食べても飽きないよう、味付けはあえて控えめにしています。刺激的なほうが瞬間的には売れますが、私たちはソイカラをロングセラー、定番にしたいのです」

※SAPIO2013年12月号

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン