野球を通じて日米文化の違いを感じることはよくある。文化の相違はプロレベルからではなく、なんと9歳から違いは始まっていた。「アメリカの少年野球こんなに日本と違っていた」の著者小国綾子さんに、少年野球からみた日米の子ども教育の違いについて聞いた。(取材・文=フリーライター・神田憲行)
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小国さんは2007年から4年間、海外駐在した夫と長男太郎君(仮名)と3人でメリーランド州モンゴメリー郡ロックビル市に暮らした。小学生だった太郎君が参加した現地の少年野球チームで体験した驚きや感激を記したのが、本書「アメリカの少年野球こんなに日本と違っていた」(径書房)だ。
一読してまず驚いたのが、選手起用のやり方から違う。
「アメリカの多くの少年野球チームは選手数を1チーム12、13人程度に制限し、全員をベンチ入りさせます。守備は9人で守りますが、打順は普通、チーム全員で回します。勝負を掛けたトーナメント大会などで打順を9人だけで回したとしても、最低でも1度は打席に立たせてもらえます」(小国さん)
小国さんがいた地域ではチームを選ぶのにいくつも選択肢があった。楽しむことが最優先で誰でも入れてプレーもレベルの低い「レクレーションチーム」や、勝ち負けにより力点を置き、時には他の街にまで遠征にいく「トラベルチーム」などだ。トラベルに入るためには、たとえ9歳でもトライアウトという入団試験を受けなくてはいけない。それもチームによっては毎シーズンごとに受験しなくてはいけない。自分がいくらチームに愛着があっても、より上手な選手がくれば弾かれる可能性は十分にあるし、逆に、高いレベルのチームに移っていく選手も珍しくない。
日本なら最初に入ったチームに基本的にずっと所属して、弱くてもチームみんなで強くなって行こうというチーム意識があるが、アメリカにはない。自分のチームの4番打者が次のシーズンにライバルチームの4番で登場することも平気なのだ。
「チームのコーチから『あのチームいいぞ。君の息子、トライアウトを受けたらどうだ?』と勧められたり、打撃コーチをしているパパの息子が別チームに合格し、父子で去って行ったりとか平気です。残された方も『裏切られた』『抜け駆けしやがって』なんて感覚ではなく『すごいな、頑張れ』って」