山口県立美術館の展覧会場にずらりと並んだ圧巻の「五百羅漢図」
相沢:これだけの作品、どれくらいの時間がかかったんでしょうか。
山下:100幅描き上げるのに10年というから、1幅仕上げるのに大体1か月。しかも、新勝寺や浅草寺はじめ、名だたる寺から依頼される“売れっ子作家”でしたから、寝る暇もなかったでしょう。
相沢:100幅も最後の方になると雰囲気だけでなく、絵そのものが変わった気がします。
山下:最後の方は弟子たちが描いたんでしょう。糟糠の妻が筆をとったのではないかともいわれます。一信本人に、最後まで描かせてあげたかったと思わせるところも含めてこの作品の魅力なんですね。
●山下裕二(やました・ゆうじ):1958年生まれ。明治学院大学教授、美術史家。『日本美術全集』(全20巻・小学館刊)の監修を務める。美術史の専門家でありながら親しみやすい語り口と斬新な切り口で日本美術を応援する。
●相沢紗世(あいざわ・さよ):1978年生まれ。雑誌『BAILA』『STORY』『GOLD』の人気モデルとして活躍中。2010年よりテレビ『ぶらぶら美術・博物館』(BS日テレ)にレギュラー出演するほか、多くのCMでも活躍。
■『五百羅漢図』展
徳川将軍家の菩提寺だった東京・芝公園の増上寺に秘蔵されてきた『五百羅漢図』。身の丈ほどの掛軸100幅(100枚)に描かれた羅漢たちが一大叙事詩を繰り広げる超大作を一挙公開。山口県立美術館(~12月8日)にて開催中。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2013年12月6日号