国内

天皇陛下 水俣病患者に悲しみ苦しみの実体験伝えるよう望む

 水俣病といえば、今から約50年前に発生が確認された環境汚染による公害病だ。公害の原点とも呼ばれ、作家、石牟礼道子氏の『苦界浄土 わが水俣病』により日本じゅうに知られて久しいが、いまもなお苦しむ患者がいる。10月末、天皇・皇后両陛下が熊本県水俣市を初めて訪れ、水俣病患者と懇談した様子を作家の山藤章一郎氏が報告する。

 * * *
「ご苦労なさいましたね」「お会いできてうれしゅうございます」

 初めてまみえた水俣病患者に、皇后陛下はそう慰労された。天皇陛下も、患者、家族10人ひとりひとりに顔を向け、予定外の長い慰霊の発言をされる。全文。

「本当にお気持ち、察するに余りあると思っています。やはり真実に生きるということができる社会をみんなで作っていきたいものだとあらためて思いました。本当にさまざまな思いを込めて、この年まで過ごしていらしたということに深く思いを致しています。今後の日本が、自分が正しくあることができる社会になっていく、そうなればと思っています。みながその方に向かって進んでいけることを願っています」

 今年10月末、両陛下は初めて水俣を訪れた。これより2か月前、宮内庁から〈水俣病資料館語り部の会〉緒方正実会長に連絡があった。

「天皇陛下から異例の申し出があります。『悲しかった、〇〇さんの家ではこんなことがあった、悔しくて泣いた。そんな個人的な思いを伝えてください』と」

 緒方さんは水銀を規制する〈水俣条約〉採択〈外交会議〉の開会式でもスピーチしていた。だが、天皇陛下はもっと踏み込んだ悲しみ苦しみの実体験を伝えてくれるようにと、望まれた。

 館にゆっくり入ってくる両陛下を患者、家族が起立一礼してお迎えする。緒方さんは身震いした。

「当初、私たちと両陛下のあいだは1.7メートルと決められていたんですが、わずか1メートルになってしまった。畏れ多いことでした」

 背後には、宮内庁長官、県警本部長、知事、県議会議長。

関連記事

トピックス

実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン