試行錯誤の末、シャッターユニットのモーターの動力を伝えるギアを工夫することで、通常の回転(正転)と逆転を1つのモーターで行なうことに成功。モーター自体も小型ながらパワーのある物を採用することにした。
小型化の追求は、デジタルカメラの心臓部であるCMOSセンサー(レンズから入ってきた光を電気信号に変換して蓄える働きを持つ)のモジュールやメイン基板、そしてバッテリーの小型化にまで及んだ。
一眼レフカメラ特有のペンタミラーなど光学系や、オートフォーカスユニットの位置などすべてをゼロから見直す作業も進められた。これにより、ボディの高さを大幅に下げることが可能になった。
外装素材の再検討も行なわれた。強度を保ちつつ薄肉化できる新素材を採用することで、さらなる軽量化を図ったのだ。それは0.1グラム以下の戦いだった。
「とても地道な作業でした。でも、どんなに時間と労力がかかろうとも、掲げられた高い目標を達成したいと思うのは“設計者の摂理”。そして、挑戦したからにはなんとしても成功させたい。“努力は報われる”のではなく、私は『努力は報わせる』と考えています」
(文中敬称略)
■取材・構成/中沢雄二
※週刊ポスト2013年12月20・27日号