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自宅で死ぬには在宅ケアチームの結成と本人の意思表明が重要

 自宅で死ぬ──この夢を自分一人の力で実現するのは不可能だ。理想の在宅死を迎えるためには、それを支える「在宅ケアチーム」の存在が必要となる。そのメンバーとしては、在宅医、訪問看護師、ホームヘルパー、ケアマネージャー、理学療法士、そして家族の理解も不可欠だ。

 こうした在宅ケアチームを結成した時点で本人がしておくべきことは、チームのメンバーに対し、在宅死を望む意思を表明しておくことだ。

 その一つの方法が「リビング・ウィル」である。これは延命治療を拒否するための書面のことを指す場合もあるが、広い意味では終末期医療、介護に関する本人の意思表明書のことである。

 とりあえず紙に日付、名前、自宅で死ぬことを希望する旨を書き、印鑑を押して、在宅医、訪問看護師、ケアマネージャーなど在宅ケアチームの全員が見える場所に貼っておき、言葉にも出して伝えておく。

 中でも、強く意思表明しておくべき相手は家族、親族だ。本人に判断能力がない場合などは、家族は本人に代わって延命治療を行なうかどうかの選択をする役割を担う。勤務医時代に500人以上、その後、かかりつけ医として患者の自宅で700人以上を看取ってきた長尾クリニック院長の長尾和宏氏が指摘する。

「不治の病で、末期症状の患者の場合の治療は、延命どころか、むしろ寿命を縮め、本人の苦痛を増大させるだけです。ところが、患者の子供の中には『親不孝ばかりしてきたから、死ぬ前ぐらいは最高の医療を受けさせたい』と病院での治療を望む人がいます。また、在宅死を望む本人の意思を尊重しても、今度は遠くの親戚から『親を見殺しにするのか』と責められる子供もいます。

 残念ながら、リビング・ウィルに法的拘束力はなく、医師は家族の決定には逆らえません。でも、自宅に意思を書いた紙を貼った上で、家族や親戚に周知し続けていれば、家族や親族も『最期ぐらいは本人の希望を叶えよう』となるでしょう」

 いつ、意識が不鮮明になるかわからない終末期においては、最期までどのように生き、どのように死にたいのか、逐一本音を周囲に話しておくことが重要になる。

※週刊ポスト2014年1月1・10日号

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