だが、栗本は徳田の非常識ぶりに絶句しつつも、決して悪印象を持った訳ではなかったという。事実、後に政界入りして徳田と自由連合の旗揚げに参画することになったわけだし、その上に栗本は自由連合で「代表幹事」という役職に就き、徳田とともに党務の中枢を担っている。栗本自身がこう振り返る。

「ちょっと取材にきた相手に、選挙のカンパを出してくれっていうのは非常識だと思ったけれど、だからといってマイナスの評価をしたわけじゃないんです」

──その後、実際に自由連合で一緒に行動してみて、徳田さんについてどんな印象を持ったんですか。やっぱり普通人の常識とは違うところが……。

「あります。私がずっと弟子に言ってきたし、自分も意識してきたことだけれど、たとえば論文を書くときに、ちゃんと考えた結果だったなら相当変わった結論になっても構わないけれど、普通とは変わっているんだということをきちんと意識しておかなきゃいけない。そうしないと議論に勝てないし、いい論文は書けないと言ってきたんだけど、あの人(徳田)はそういうことを考えていない。そこは印象的でした」

──あまりいないタイプですよね。普通は世間や社会からの評価を気にし、それに右往左往し、時には縛られてしまう。

「私も結構いろいろな人間に会ってきたけど、あんな人は一人しかいない。いろいろ変わったことを言ったりとか、変わっていることを売り物にしているヤツとかにも会ってきたけれど、あれほど変わっている人はいなかった。とにかく、純粋に変わってるんだよ(苦笑)。普通、あんなに純粋に人は生きられない。逆に言えば、だからまっすぐに進めるんだ。そんなトラさんに異様な魅力を感じる人はたくさんいますよ」

──よくも悪くも真っすぐというか、ひたむきというか……。

「そう。真っすぐでひたむきっていうのは、まったく間違いない」

──でも、目的を達成するためには手段を選ばないところがあるでしょう。だから、世間的には「汚い」とされることも平気でやったんじゃないですか。特に政治資金の問題なんかでは……。

「明らかに汚いし、僕としてはマズいんじゃないかと思うことはいくつもありましたけど、誤解を恐れずに言えば、根が純粋なんです。純粋に生きる中で、純粋じゃないように見える行動をするから、話が混乱する」

──選挙違反とか、買収とか……。

「悪事をするのに純粋もくそもないんだけど、それでも純粋なんです。目の前をカネが動いても、汚く見えないんだ。これはつきあってみないと分からないな……。もし泥棒だとしたら、純粋な泥棒。あるいは、『汚くないウンコ』みたいな感じがした。あれはもう、何とも言えないな。違う人類なんですよ。そんな人が、あんな難病になっちゃうんだからな……」

 汚くないウンコ――。私は思わず吹き出しそうになったが、栗本はあくまで真顔だった。そして、栗本の指摘は、私にも大いに頷けるものだった。

※『トラオ 不随の病院王 徳田虎雄』(小学館文庫)より適宜抜粋

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