国内

新聞社が部数維持のため販売店に売り渡す「押し紙」とは何か

 読者離れ、広告収入減に歯止めが掛からない新聞各社は、販売部数維持のためなら手段を選ばない。高齢者を狙った悪質勧誘、いまだ続く新聞販売店への「押し紙」問題をジャーナリスト・鵜飼克郎氏がリポートする。

 * * *
 2013年8月、国民生活センターは「日本新聞協会」と「新聞公正取引協議会」に対し、異例の要望書を出した。新聞の勧誘・契約を巡るトラブルがあまりに多いためだ。
 
 同センターにはこの10年間、毎年約1万件の新聞勧誘・契約に関する相談が寄せられている。訪問販売関連では最多で社会問題となっているが、これを報じた全国紙は日経と産経の2紙だけだ。扱いは小さく、高齢者をターゲットにした悪質勧誘が多発していることにはまったく触れていない。以下は同センターに寄せられた相談内容だ。
 
・米や発泡酒、洗剤、バスタオルなどを渡され、アンケート用紙だと言われてサインをしたが、実は新聞の購読契約書だった(40代女性)
 
・老人ホームに入居するため、9年間の契約の中途解約を申し出ると、契約時に景品でもらったテレビを新品で返せと言われた(80代男性)
 
・購読期間1か月のつもりで契約したが、購読契約書には3年間と書かれていた(80代女性)
 
 悪質な勧誘が後を絶たない一因として、販売店の厳しい経営状況がある。部数減だけでなく、販売店の経営を圧迫しているのがいわゆる「押し紙」問題だ。
 
 押し紙とは、新聞社が販売店に実際の配達部数を超えて強制的に売り渡す新聞のこと。たとえば1000人の購読者しかいない販売店に対し、1500部の新聞を押し付ける。そのため500部が売れ残りとなるが、販売店はその代金まで新聞社に支払わなければならない。販売店に対する新聞社の優越的な地位を利用し、押し紙を強引に買わせる理由は、その分の売り上げというより「広告」だ。
 
 新聞の広告価値は、発行部数を公査する「一般社団法人日本ABC協会」がカウントした部数によって決まる。押し紙を上積みすれば見た目の発行部数を維持できるため、広告料金を高止まりさせることができる。
 
「販売店だけでなく、ビジネスホテルやファミレスに無償で新聞を提供し、見せかけの部数を維持する手口もある」(広告代理店関係者)
 
 これは広告主に対する詐欺ともいえる行為である。

※SAPIO2014年1月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
「What's up? Coachella!」約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了(写真/GettyImages)
Number_iが世界最大級の野外フェス「コーチェラ」で海外初公演を実現 約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン