当初は、大英の日本でのカウンターパートともいえる東京国立博物館(東京・上野)での開催が検討されていたが、「やはり難しい」という判断に至った。それと前後して、朝日が主催者から降りると同展関係者に連絡があったという。その時点で会場もスポンサーも完全白紙になった。前出の同展関係者がいう。
「のべ20か所以上あたりました。最初は公立の美術館や博物館、そこがダメなら民間の美術館、さらに商業施設と……どこも最初の反応は良いのですが、話を詰めていくと“やっぱり難しい”となる。公立の美術館は教育委員会など“お上”の反応を恐れ、民間の美術館はマスコミの批判を恐れ、そのマスコミも些細な抗議を恐れる。みんな勝手に自主規制をして、萎縮してしまっている」
確かに明治から戦後にかけて、春画は当局の取り締まりの対象ではあった。しかし、今から20年以上前には出版物としては事実上解禁され、現在は書店に多数の関連書籍が並ぶ。当然ながら、現在に至るまで一度も摘発はされていない。
特別学芸員として同展のプロジェクトに参加していた、立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェローの石上阿希氏がいう。
「大英では年齢制限だけでなく、内容の自主規制も行なった。子供が描かれていたり暴力的な描写は極力避けました。日本でも同じような配慮ができるはず。
しかし、日本ではそんな議論に発展するところにすら至っていません。その前段階で“できない”と結論が出されてしまう」
※週刊ポスト2014年1月31日号