メンタルヘルスケアの専門家によると、涙にはストレス解消の効果があるという。そこで現代人の心を癒やす泣けるエピソードをご紹介。36才・主婦のお話です。
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10年ぶりに、高校時代の親友A子に再会した時のことです。私の知るA子は、ぽっちゃりしたイメージでしたが、再会した彼女は、ショートがよく似合う、スリムな女性に変身していました。おかげで、A子と気づかなかったくらい。
「私のこと忘れちゃった?」とおどけて笑う彼女は、とても垢抜けていました。「ちょうど、連絡しようと思っていたんだ。今度食事に行こうよ、渡したいものもあるし」と言われ、私も「うん、今度ね」と笑顔で返しましたが、「来週の土曜はどう?」と、手帳を出し始めるA子に面食らってしまいました。
実は、キレイになったA子に嫉妬し、あまり行く気がしなかったのです。「今急いでいるから、帰ったら連絡するね」と返事を濁して、とりあえず別れました。その後、メールでもA子から誘いが来ましたが、理由をつけて引き延ばし、結局食事には行かないまま、そのことを忘れていました。
半年後、別の友人から「A子、乳がんで亡くなったんだって。お葬式行く?」とメールが来ました。突然のことに頭が真っ白になりました。だって、私もA子も当時はまだ32才でしたから。
お葬式で焼香を済ませ、帰ろうとした時です。A子のお母さんが後ろから追いかけてきました。どうしたんだろうと思っていたら、「本当は直接渡したかったみたいなんですけど…。ごめんなさいね」。そう言って、包み紙を渡されました。中には、高校時代に貸したギャグ漫画本とカードが入っていました。
「いつでも返せると思っていたら、こんなに長い間借りてしまってごめんね。おかげで何度も笑わせてもらいました。ありがとう」
余命がわかってからのA子は、“大好きな人に会う・やりたいことをやる”と決めて、体を動かせる時は、活動的に出かけていたそうです。
今でもその本を読むと、笑えるというよりも、A子を思い出して、後悔の涙が流れてしまいます。
※女性セブン2014年2月13日号