小倉氏らが大会で活躍した1991年は、2年後に開幕するJリーグに参加する10チームが決定した年だった。この大会で活躍し、後にJ戦士となった名選手たちも多くいる。

「僕らの世代でいうと、武南からマリノスにいった上野良治はうまかったですね。彼が1年の時の決勝はいい試合でした」

 天才と呼ばれた上野を擁する武南は、68回大会決勝で、南宇和と対戦している。この試合では、1点をリードされた南宇和が、後半開始直後に立て続けにゴールを決めた。その後、試合終了まで続いた武南の猛攻を、必死に守り切った南宇和が2-1で勝利。四国初の優勝を飾った。

 ラグビー同様、雪の中の名試合もあった。第76回の決勝は、本山雅志を擁する東福岡が、中田浩二のいた帝京を2-1で破り、史上初の3冠(インターハイ、全日本ユース選手権)を達成している。

「あと、2年連続得点王になった平山(相太)がいた国見は強かったですね。特に平山が3年のときの決勝(82回)。すごい攻撃力だった。最近だと鹿児島城西の大迫(勇也)もいいストライカーだと思いました」

 こういった“怪物”級の点取り屋がいなくとも、旋風を巻き起こしたチームもあった。「セクシーフットボール」を標榜し、高速ドリブルと、華麗なパス回しの美しいサッカーで観る者を魅了した野洲である。84回決勝で、野洲は連覇を狙う鹿児島実業と対戦した。

 試合は、延長後半7分に自陣左サイドでボールを受けたDFの糸を引くようなサイドチェンジから、野洲が見事なパスワークを見せ、この大会のベストゴールとも言える決勝点を決めた。

「野洲のサッカーは、それぞれの個人技が高いこともありますけど、選手ひとりひとりのアイデアにまかせている点が、今の若い世代のサッカーという印象で、面白いんですよね」

 国立のピッチに立てるのは、開幕戦を戦うチームとベスト4に進んだチームのみ。そのため、この大会は、「目指せ国立」がキーワードになってきた。小倉氏は国立競技場の解体をどう思うのか、最後に訊いた。

「野球の甲子園、ラグビーの花園のように、サッカー選手にとって国立はずっと憧れの地であり、特別な場所でした。無くなるのは、やっぱりすごく寂しいですが、新しい国立競技場でも、選手達はきっと素晴らしい戦いをみせてくれると思います」

※週刊ポスト2014年2月14日号

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