ただし、現代において各項目の支出額の増減だけに一喜一憂していていいのか。例えば、2012年と2013年の比較では、肉類、魚介類、野菜・海藻類などの主要項目が伸びるなか、穀類は6万5707円→6万4477円と下落した。一方、前述の通り、「食料」全体への支出も目減りし続ける間も、「肉類」は右肩上がり。「食」における景気とは、支出額からだけではなく、食卓の光景の移り変わりなども加味する必要がある。
例えば、今回の家計調査では、外食(一般外食)への支出は15万6638円にとどまっている。2009~2012年の支出額よりは多いものの、総世帯の調査が始まって以降、2008年までの水準には及ばない。一方中食への支出額は9万4475円と過去最高を更新した。栄養面から見れば、日本人の摂取カロリーは1971年の2287kcalをピークに下がり続け、2012年には1874kcalとなった。この数字は、第二次世界大戦直後の1946年の1903kcalを下回っているが、その一方でメタボリック対策も叫ばれる──。「食」を取り巻く環境は混沌としている。
和食の無形文化遺産登録はめでたいことには違いない。だが、浮かれている場合ではない。日本の食卓をどうするべきか。日本の食卓を再定義、再構築できるのは、日本人だけだ。いくつかの「ものさし」があってこそ、「食」はもっとおいしくなる。