確かに、日経はもともと安倍政権べったりだったわけではない。たとえば日経は、昨年1月16~21日には、4回にわたって「安倍政権経済政策の課題」というテーマで識者の意見を紹介し、
〈デフレから悪性インフレへの急転あり得る〉
〈金融政策だけでは高い成長率を維持できず〉
〈公共支出で所得増えても一部は海外に流出〉
と、アベノミクスに懐疑的な論陣を張っていた。だが、直後の1月22日に政府と日銀の物価目標2%の共同声明が出て、株価が大幅に上昇した途端、アベノミクス礼賛の論調にコロッと転じたのである。
日経新聞OBの田村秀男・産経新聞特別記者は、次のように苦言を呈する。
「元々、日経は株式市場に重点を置いた紙面で他の追随を許さない特徴があり、読者も景気がよくなっているという記事を期待している側面があります。だからといって経済政策の世論形成にも影響力のある新聞が、意図的なトーンの報道に偏るのは望ましくない。経済指標を見ても、景気回復とは反対の数字も出ている。もっとバランスを取るべきでしょう」
日経は「冷静かつ客観的に報道しています」(広報グループ)という。
安倍首相がカブを持ち上げ「株上がれ~」と叫んだように、ただ日経平均の上昇だけを夢見る日経は、いつの間にか安倍政権の妄想、つまり「アベノファンタジー」に浸りきり、日本経済の現実から目を背けようとしているのではないか。
※週刊ポスト2014年3月14日号