子供を海外で育てたいと考える韓国人は英語志向も強い。政府は「ハングルは世界一の文字」と喧伝し、国民もそれを支持しているように見えるかもしれないが、ハングル圏の市場規模が小さいことは誰が見ても明らかであり危機感を持つ韓国人は少なくない。アメリカ・カナダなど英語圏への移住が多い所以である。
母子だけが英語圏に移り住み父親は韓国に残って仕送りするというスタイルも増えてきた。そうした父親は「キロギ・アッパ(雁の父)」と呼ばれ、欧米的な発想を身につけた子供とコミュニケーションが取りづらくなったり、経済的な負担が過大になったりして孤独死や自殺に追い込まれるケースが社会問題となっている。
それでもなお海外への脱出が止まらない背景には韓国人の伝統的な「中央志向」もある。ソウルはもともと「都」を意味する言葉で、李氏朝鮮時代(1393~1910年)には特別な人間しか住むことが許されなかった。科挙の試験に通ればソウルに住み、一族郎党を呼び寄せることができたため多くの国民がそれを目指した。
戦後、誰でもソウルに住めるようになると人口集中が始まった。現在、総人口約5000万人のうち半数近い約2300万人がソウル都市圏に住む。韓国第二の都市・釜山は1990年代から人口が減り続け、400万人以上あった人口が今は約340万人(2010年)しかいない。
郷里への愛着よりも中央への執着が勝る。そんな韓国人にとって目指すべき新たな“ソウル(都)”が米国など真の先進国なのである。グローバル社会において祖国への愛情は稀薄になっていく。
※SAPIO2014年4月号